悩みを持つ人に接する心を育む

悩みをどう克服するか、悩んでいる友達にどう対応すればよいのか、今を生きる若者たちと人生の先輩が語り合いました。

北海道大学4年 平尾 果乃子 さん、北星学園大学1年 本間 康介 さん、北星学園大学2年 高橋 真理愛 さん、北海道大学4年 近藤 航 さん

みんな経験している、青少年期の不安や悩み

日本の年間自殺者数はここ5年ほど減少傾向にありますが、若者の自死はむしろ増えています。精神的に不安定な青少年期は、不安や悩みを抱え込みがちなことも背景にあるといわれますが、皆さんもそんな経験はありますか?

高橋私は小学5年〜高校まで同じクラスの友達が少なく、学校に居場所がないように感じていました。幸い他校や他クラスに仲の良い友達がいたので、自分の気持ちをつづったメールを送って読んでもらっていました。思いつめた言葉を書くこともありましたが、「あなたがいなくなると寂しい」という友達の言葉が支えになりました。

平尾私も親友に励まされた経験があります。高校受験の時、模擬試験の結果が振るわず悩んでいたのですが、期待してくれている親にも言えず…でも親友に手紙で打ち明けたことで「一人で頑張らなくてもいいかも」と思えるようになりました。

本間僕は中学時代に卓球部の部長と生徒会役員を兼任し、両立の難しさに苦しんだ時期がありました。誰に相談すればいいのか分からず、ストレスで体調を崩したりしたのですが、今思えば話を聞いてくれる友達はいたのに、一人で抱え込んでいたんですね。

近藤僕自身はあまり悩んだ経験はありませんが、最近「就活に失敗して自殺」というニュースを聞きます。就活で悩んでいる学生は周囲にも多いと思いますね。

話を聞いてもらうだけで救われることもある

皆さんのお話を聞くと、悩みを話せる人の存在は大きいですね。でもそういう友達が周囲にいない人もいます。私が活動をお手伝いしている「北海道いのちの電話」では年間2万件の電話を受けていますが、生死に関わる相談だけでなく、中には「おやすみなさい」と言うために電話をくださる方もいます。つまり、そういうことを言える人がそばにいないんですね。そんな人が誰かと言葉を交わして安心して眠り、また新しい朝を迎えてくれたらいいなと思って私たちは電話に向かいます。私たちの役目はただ話を聞くこと。死にたいほどつらくても、誰かに話すだけでほっとすること、ありますよね。

高橋私も「いのちの電話」に電話したことがあります。「絶対に秘密は守る」と言ってもらえたので、安心して話すことができました。悩みは解決しなくても、聞いてもらえるだけでほっとしたのを覚えています。

それはよかったですね。以前、街頭募金に立っていた時、「私はいのちの電話に助けられ、今とても幸せに生きています」と募金してくださった方がいました。今、一人で悩んでいる人にも、一歩踏み出せば良いことがたくさん待っているんだと思ってもらえたら幸いです。

一人一人がゲートキーパーになれる社会へ

「いのちの電話」のほかにもさまざまな相談機関がありますが、皆さんにぜひ知ってほしいのが「ゲートキーパー」です。ゲートキーパーとは悩んでいる人に気付き、声を掛け、話を聞き、必要に応じて専門機関につなげ、見守る人のこと。道内でも地域の各種団体などによるゲートキーパー養成の動きが高まっています。

近藤今は地域のつながりが薄くなってきていると聞くので、家族や友達に話せない方への援助に必要な存在かもしれないですね。

その通りです。昔みたいによその子でも叱ったり気に掛けてくれる大人がいたご近所付き合いが失われた今、ゲートキーパーが近くの人を助ける=ご近“助”さんとして、地域の絆を結ぶ一助になれればと思います。

平尾周りに相談できる人がいないけど、自分から専門機関に相談するのは抵抗があるという人もいるはず。見守ってくれる人が近くにいるのは心強いと思います。

本間最初はゲートキーパーって難しそうだなと思いましたが、「気付く」「話を聞く」など、自分にできることで、悩んでいる人に手を差し伸べられたらいいなと思いました。

自分にもできることがあるかもしれないという気持ちを、ぜひ周りの仲間にも広げてほしいですね。一人一人がゲートキーパーとなり、生きづらさを抱えている人が生きやすい社会になればと願っています。

つらい時は誰かに話せばいい。肩の力を抜いて受験や就活も乗り切れました。(平尾)、悩むことは苦しい反面、自分を見つめ直すきっかけにもなると思います。(本間)、悩んでいた日々を乗り越え、いま幸せに生きている喜びを実感しました。(高橋)、人生の選択肢はたくさんある。そう思えれば就活の悩みも軽くなるのでは?(近藤)

大切な人のいのちを守る4つの約束、気づく・耳を傾ける・つなぐ・見守る

あなたの身近な人で、最近様子がおかしいと感じたことはありませんか。
その変化に気付いたら、まずは声を掛け、話を聞いてください。
もし、死にたいほど気持ちが追い込まれているようなら、
専門家につなぎ、あたたかく見守ることが大切です。
周囲にいる私たちが気付くことで、その「こころの疲れ」の進行は止まります。

  • EDIT:北海道新聞社広告局/nu
  • TEXT:高崎 克秋
  • PHOTO:川村 勲
  • 記事公開日:2015年3月1日 朝刊 掲載

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