1時限目

健康の時間

さっぽろ健康スポーツ財団

医療担当部長 中央健康づくりセンター 村上 猛さん

 普段は市民の皆さんの健康づくりをサポートしている村上さん。今回は健康に若々しく生きていくためにはどうすればいいのかを教えてもらいました。

 皆さんは実際の年齢よりとても若い人を見て、どうしてあんなに若く元気なのだろう、と疑問に思ったことがあると思います。これを解明するヒントの一つとして、ある研究結果が報告されています。 それは自分の年齢について「まだ○歳」と思うか、それとも「もう○歳」と思うのかによって、その後の状況が変わってくるというものでした。アイルランドでの調査で、ポジティブ思考の人・ネガティブ思考の人計135人を2年間かけて調査したところ、ポジティブな人に比べ、ネガティブな人の歩行能力と認知能力がはるかに落ちていることが分かったそうです。「その人の飲んでいる薬や生活環境・健康面は全く無関係で、あくまで本人のマインドが体力・認知能力に大きく影響するということです」と村上さん。WHO(世界保健機関)からも最近、自分の年齢に対してネガティブに思う人は病気の回復に時間がかかる、と発表されているそうです。自分の思考が健康を左右するとは驚きです。

 では健康はどのように保てばいいのでしょうか。

 昔、一世を風靡した双子のおばあちゃん「きんさん・ぎんさん」の蟹江ぎんさんは、生前に自身の献体を希望していました。108歳で亡くなった後に解剖したところ、心臓と血管がとても元気で細い血管まで動脈硬化がなかったそうです。ぎんさんは普段からバランスのよい食事をとり、家が農家で常に体を動かしていたため、これらが動脈硬化を抑えていた原因と考えられているそうです。


ただし、むやみに運動するのは危険な場合も。「意外と知られていませんが、運動中はかなり血圧が上がります。上の数値が250を超えるとドクターストップがかかりますし、血圧の薬を飲んでいても、上がる人は上がります」と村上さんは注意を促しました。特に、頑張りすぎる人は運動後に気が抜けるのか、急激に血圧が下がり失神してしまうこともあるそうです。

また、心臓と血管が衰える原因について、糖尿病や高血圧をはじめとした生活習慣病に加え、喫煙や脂肪肝、脂質異常などが動脈硬化につながり、血管を弱くしているそうです。村上さんのもとへ相談に訪れる人の中には、血圧がとても高いのに症状がないため、今まで何の治療もしていない人がいるそうです。

村上さんは最後に「家庭でも血圧を計り、食生活では食物繊維を今以上に増やし、糖分や炭水化物を控えめに、バランスのよい食事を心がけてください」と、会場の皆さんに普段から健康を意識する大切さを訴えました。

2時限目

相続の時間

一般社団法人 日本相続知財センター札幌

行政書士/相続診断士 加藤 るり子さん


今回はピンチヒッターとして講師を務めた加藤さん。相続対策について、ユーモアを交えながらお話してくれました。

まず基本的な相続手続の流れと対策の優先順位などの説明後に、昨年の1月から始まった相続税の大増税について説明がありました。平成26年12月までは夫が亡くなり妻と子1人が残された場合、夫の財産が7000万円(基礎控除)以上あれば相続税を支払う必要がありましたが、平成27年1月からはこの基礎控除が大幅に下がり、4200万円となりました。この金額は預貯金だけではなく、不動産や株などの資産関係全てを含めた額。「北海道の場合、今までは100人のうち2人程度に対し相続税がかかっていたのですが、今後はその2、3倍と言われています」と加藤さん。最近は相続税増税を受けて、相談者が急激に増えているそうです。

続いて実際にあった例を紹介してもらいました。夫が亡くなって妻と子1人になり、住んでいるマンションの名義を夫から妻に変えたいが、夫には45年前に離婚し今まで一度も連絡をとっていない前妻と子がいるため、その子供に署名と押印をもらわなければならない、というもの。これまで会ったこともない前妻と子供に連絡をとるのは気が重いですが、その上、お金が欲しい・嫌がらせしたい、といった理由で押印してくれないこともあるそうです。加藤さんは「この場合は、生前に妻の名前に変更したり、遺言を作ったりと何かしら対策が必要になるでしょう」とアドバイスしてくれました。

最近では、親の介護をきっかけとして兄弟仲が悪くなってしまう人がすごく増えているそうです。加藤さんも、実際に同居している認知症の母親の介護で苦労しているとき、離れて暮らしている妹に対し「あのやろう!」と恨めしく思うこともあることを告白。会場の皆さんからは笑いが漏れました。「介護をする子供の立場からすると、ぜひ親に考えて欲しい問題です。単純に遺産を均等に分けるのではなく、介護をする大変さを考慮してその分優遇してくれると、親が介護してくれた子供に感謝していたことも伝わりますよね」と加藤さんは実体験をもとに話してくれました。

また、最近話題の空き家問題にも認知症は大きく関わってきます。老人ホームなどに入居する際に名義人本人がすでに認知症で、家を売りたくても売れなくなることが、空き家が増えている一因になっているそうです。

それを防ぐためには、まず登記名義や解体費用・遺品整理の予算などの現状把握から準備をすすめていくこと。そして認知症対策の一つとして、元気なうちに任意後見契約を結び、後見人を決めておくことが大事です。家庭裁判所に申立てをする法定後見制度に比べ、基本的に親子間の契約なので月々の費用や報酬もかからないそうです。 「これらのことを知っても、行動しなくては何にもなりません。まずは思い込みを捨てて専門家に相談し、相続対策の第一歩を踏み出してはいかがでしょうか」と加藤さん。

加藤さん自身の体験を踏まえた、そう遠くはない未来に起こりうる内容に、参加者の表情も真剣でした。

参加者の感想

「健康の時間」について
  • 札幌市が健康づくりに力を入れているのを初めて知った
  • 札幌市の体力測定を利用してみたいと思う
  • 健康寿命延長のための講座も開いてほしい
「相続の時間」について
  • 相続についてもっと知識が必要と思った
  • 相談できるところがあるのが分かり、よかった
  • 実例を交えた遺言の書き方などが知りたい

ページトップへ

1時限目

終活の時間

一般社団法人 シニアライフサポート協会

代表理事 小番(こつがい) 一弘さん

 プラチナ世代の人がこれからの人生をどう過ごすかを考えたときに、準備をして解決しなければいけないことがたくさんあると思います。小番さんには高齢者の住まい探しについて、色々と教えてもらいました。

 まず、高齢者の住まいにはどのような施設があるのでしょうか。特別養護老人ホーム(特養)・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・高齢者マンション・高齢者下宿・グループホーム・ケアハウスなど、他にもたくさん種類があります。小番さんは相談に来る人に「こんなに種類があるなんて知らなかったし、違いもわからない。そもそもお金を払えばどこでも入れるの?」という質問をされることがとても多いとか。

 特に、現在特別養護老人ホームは、入居待ちの人が全国で約52万人いるそうです。仮に近所に施設があったとしてもすぐ入居できるわけではなく、空き状況の他に入居条件があるとのこと。住まい選びと介護保険は関わりが深く、例えば「『介護3』以上でないと入居不可」など、介護認定がどうなのかがポイントになってきます。「私たちが住まいの相談を受けるときは、必ず介護認定のことを相談者に伺います」と小番さん。介護認定の状況によって入居できる・できないが変わるのはとても重要なことです。


さらに、入居にはどのくらいお金がかかるのか。札幌市内には有料老人ホームを始めとした高齢者施設が約650ヶ所あるそうです。それらを平均すると、家賃・管理費・食費を合わせて約14~15万円ほど。高いと20~30万円、安いところだと10万円程度のところもあるそうです。また、有料老人ホームでは一時金のかかることが多いですが、最近はかからないところも増えているようです。

お金の問題が解決したら、次は条件面の疑問が出てきます。規模の違い、体調不良などのトラブルがあった場合の対応、病院との連携、食事の味など、パンフレットを見るだけでは分からないことだらけです。 「その場合はぜひ、見学に行ってみてください。前もって見ておけば、住んでいる人や職員の様子がよくわかります」と小番さんは会場の皆さんに見学を強くお勧めしました。同時に「相談者の中には『まだまだ入居は先のことだから』と見学を後回しにして、いざその時になると入院していて、家に戻れない人が多いです。そうなると家族が選ぶことになり、本人の希望に沿わない施設に入居する場合もあります」と注意も促しました。

高齢者の住まい探しは色々と大変ですが、将来的に自分の住居になる場所。自分の目で見て考え、時には専門家にサポートをお願いして、理想の住まいを見つけたいものですね。

住まいの時間

ファイナンシャル ファシリテーターズ

代表取締役/ファイナンシャルプランナー 加藤 桂子さん


ファイナンシャルプランナーとして家計管理や保険の見直し・税制・不動産など、多岐にわたる普段の暮らしのお金についてアドバイスされている加藤さん。ご自身もまさに今、空き家になった親の家について、色々と思案しているとのことです。今回は専門家の目と実際の経験から、空き家問題とその対策についてお話してもらいました。

日本では住宅の7戸に1戸が空き家になっており、札幌市は14万2160戸(内訳は戸建て:1万4350戸、共同住宅:12万7810戸)、この中で放置されている空き家は2万8970戸、うち1万610戸は戸建て住宅なのだそうです。「マンション(共同住宅)は比較的売りやすいのですが、戸建てはどうしていいかわからず、放置されているケースが多いです」と加藤さん。かなりの数が放っておかれているなんて驚きです。

空き家を持っている人は、具体的にどのような理由で悩んでいるのでしょうか。 まずは、管理に手間がかかること。空き家は放置すると傷みがどんどん広がるので、時々換気をして伸び放題の庭木を切るなどの作業が必要です。
 また家を持ち続ける限り、固定資産税や火災保険などがかかります。「誰も住まずに、全くの空き家になる場合、本来は一般住宅用の火災保険ではなく、割高な一般物件としての火災保険をかけなければなりません」と大事なポイントを教えてくれました。

他にも、処分について兄弟間で意見が合わなかったり、相続でもめている、住みたいけどリフォーム費用が捻出できない、荷物を片付けられなくて処分できないなど、様々な理由で空き家を処分できない状況が発生しています。

札幌市の市民アンケートで、今後空き家をどうするかという質問をしたところ、売却や賃貸、取り壊しなどの他に、全体の3割近くの人が「特に何も予定していない」という回答をしているそうです。しかし、このまま放置しておくと後々面倒なことに…。

実は去年の5月から「空き家対策特別措置法」ができ、倒壊寸前または景観を乱す空き家があれば、「特定空き家」と認定し、取り壊しなどの行政指導が入ることになりましたが、今までの6倍もの固定資産税がかかってしまうとのこと。「現在、まだ認定される空き家は少ないですが、この先はもう少し意識的に行動する必要が出てくると思います」と加藤さんは会場の皆さんに注意を呼び掛けました。

加藤さんは、母親が介護施設に入居する時、空き家がいくらで売れるのかを業者に見積ってもらい、家を売却すれば介護費用が賄えると分かり、非常に安心したという経験があったそうです。いま空き家問題に直面している人、また近い将来悩むであろう人に対し、少しでも悩みを解消したいという、加藤さんの強い思いが感じられる時間となりました。

参加者の感想

「終活の時間」について
  • 時間の関係もあるがもっと具体的に知りたい
  • 相談の窓口が見つかってよかった
  • 施設の見学にもぜひ行ってみたい
「住まいの時間」について
  • 家、土地を手放したあと。もう少し早く受講していれば...
  • 高齢者のリフォーム融資などはとても興味深い
  • 早めに行動しなければと思いつつ、毎年先延ばしにしていました

  • 時間割一覧へ