2026年4月2日(木)、星槎道都大学(北広島市)にて、新入生約230名を対象に「闇バイト防止啓発セミナー」を実施しました。北海道アルバイト情報社と北海道新聞社による「DO SAVE HOME」プロジェクトが共催し、北海道警察本部に協力いただきました。当日の様子は動画で撮影し、翌日以降にアーカイブとして2年生以上の学生にも公開。多くの学生が視聴し関心を寄せました。
これから4年間の大学生活を送る学生たちが、アルバイトに関連するトラブルに巻き込まれることなく安全に過ごすための知識を身につけられるよう、求人情報の見極め方から「闇バイト」の具体的な手口、加担してしまった場合のリスクまで、専門家が実例を交えて詳しく解説しました。
【第1部】
安全な求人広告の見極め方
スピーカー:小野 勝未 氏(株式会社北海道アルバイト情報社)
セミナーの冒頭では、株式会社北海道アルバイト情報社の小野勝未氏が登壇し、「安全な求人広告の見極め方」について説明を行いました。小野氏は、求人メディア「アルキタ」や「ジョブキタ」を運営するプロの視点から、安全なアルバイトと「闇バイト」を見分けるための具体的なポイントを解説しました。
小野氏:普通のアルバイトと「闇バイト」を見分けるポイントについてお伝えします。まず、安全な求人を見極めるプロの視点から6つのチェックポイントをご紹介します。
■1. 会社の透明性
一般的な求人広告には、会社名、住所、固定の電話番号が明記されています。「〇〇グループ」や「〇〇エージェンシー」といった曖昧な表現だけの場合は要注意です。
■2. 具体的な業務内容
「荷物を運ぶだけ」「指定の場所へ行くだけ」といった曖昧な説明は非常に危険です。正常な求人情報は、具体的な作業工程を想像できるものです。
■3. 適正な給与設定
北海道の最低賃金(1,075円)に比べて異常に高額ではないかを確認してください。日給5万円以上など、高すぎる報酬は犯罪のリスクを隠している可能性があります。
■4. 応募・連絡手段
SNSのDM(ダイレクトメール)や、テレグラムなど秘匿性の高いアプリのみでのやり取りは避けてください。信頼できる会社は、公式な採用管理システムや自社のホームページを使っています。
■5. 対面の面接・研修
基本的に面接なしで即採用というのは、身元を気にせず、何かを隠している可能性が高いです。まともな会社は必ず対面で面接を行います。
■6. 明確な労働条件
アルバイトやパートなどの雇用形態、期間、勤務場所、労働時間といったことがしっかり明記されているかを確認しましょう。募集主には労働条件を説明する義務があります。
小野氏は、この6か条を「ご自身の身を守るための基礎知識として必ず覚えておいてください」と呼びかけました。
さらに、特にSNS上で見られる具体的な「闇バイト」の手口として5つの類型と、それらに共通する3つの警戒ポイントについて触れました。
小野氏:「闇バイト」募集の代表的な手口は5つです。「ホワイト強調型」「書類・カード回収型」「スマホ・口座作成型」「写真撮影・調査型」「DM送信代行型」です。この5つの手口には共通する3つの警戒ポイントがあります。
■1. 仕事内容と報酬の不一致
「座っているだけ」「運ぶだけ」で数万円という報酬はありえません。
■2. 秘匿性の高いアプリへの誘導
テレグラムやシグナルといったアプリを指定されたら、犯罪組織からの指示だと認識してください。
■3. 個人情報の先出し
安易に身分証の自撮りなどを先に送ってはいけません。それが脅しの材料となり、一生脅されるリスクにつながります。
最後に、一般的な求人広告で使われる「未経験歓迎」「シフト自由」といったキーワードと、「闇バイト」で使われがちな「高額」「即日現金」「ホワイト案件」「タイパ」といった耳障りの良い言葉を対比させ、注意を促しました。究極の判断基準として、迷ったときは「アルキタ」や「Indeed」のような有名な求人メディアや大学内の掲示板など、信頼できる情報源を選ぶよう助言し、講演を締めくくりました。
【第2部】
一生台無しにする片道切符、
「闇バイト」の残酷な実態
スピーカー:大城 智彦 氏(北海道警察本部 生活安全部 生活安全企画課 犯罪抑止対策係)
続いて、北海道警察本部の大城氏が登壇。『一生台無しにする片道切符、「闇バイト」の残酷な実態』と題し、「闇バイト」に巻き込まれないためのポイントを解説しました。大城氏は、難しい法律の話ではなく、今後の学生生活で頭の片隅に置いてもらいたい内容として、3つのテーマに沿って話を進めました。
大城氏:まず最初のテーマは『すぐそこにある罠、「闇バイト」とは』です。「闇バイト」を知るためのキーワードを3つご紹介します。
■1. そんなにおいしい仕事はない
SNSや求人サイトで「高額収入」「即日即金」「日給〇万円」「ホワイト案件」などといった言葉を多用し、楽で簡単、高収入であることを強調して、仕事内容を明らかにしない募集は、「闇バイト」の可能性が極めて高いです。
■2. 普段使わないアプリは怪しい
応募後に、テレグラムやシグナルといった匿名性の高いアプリでやり取りするよう誘導してきます。これらのアプリは、やり取りが時間設定で消せたり、警察の捜査が非常に難しくなったりするため、犯罪組織が利用します。通常の求人であれば直接会って面接するなどがあるはずです。
■3. 個人情報は簡単に送らない
匿名性の高いアプリに誘導された後、顔写真や運転免許証、学生証といった個人情報の送信を求めてきます。絶対に簡単に送ってはいけません。
次に、第2のテーマ『逃げられない恐怖』として、個人情報を送ってしまった後の典型的なケースが紹介されました。
大城氏:SNSで「即日即金」という広告を見つけた学生が、匿名アプリに誘導され、指示通りに学生証を送ってしまいました。その後、仕事内容が「おばあちゃんの家に行ってお金をもらってくるだけ」という特殊詐欺の“受け子”であると知り、断ろうとしました。しかし、「お前の住所は分かっている」「家族はどうなってもいいのか」と脅され、抜け出せなくなってしまったのです。
さらに、ネットゲームで知り合った仲間から「海外で簡単な高収入の仕事がある」と誘われ、渡航したところ、パスポートやスマートフォンを取り上げられて監禁され、脅されながら詐欺の電話をかけさせられたという事例も紹介。SNSだけでなく、知り合いからの紹介であっても安易に信用しないよう注意を促しました。
最後のテーマは『知らなかったは通用しない』です。大城氏は、強盗や詐欺以外にも身近に潜む「闇バイト」の存在を指摘しました。
大城氏:以下の3つのケースは、すべて犯罪行為にあたります。
- 知り合った人に10万円で口座を売るため、通帳を送った。(犯罪収益移転防止法違反など)
- 口座を売るために、自分で使う目的がないのに銀行で口座を作った。(詐欺罪など)
- 「携帯電話を契約するバイト」に応募し、自分で使わないのに携帯電話を契約して手に入れた。(詐欺罪など)
大城氏は、軽い気持ちで口座や携帯電話を売買することが犯罪となり、「知らなかった」では済まされないと強調。犯罪に加担すれば、必ず警察に検挙され、取り調べや身柄拘束、最終的には罰金や拘禁刑(旧懲役刑)といった刑罰が科されると説明しました。さらに、大学からの退学処分や実名報道、家族や友人関係の破綻といった社会的な不利益も伴うと述べました。
最後に、万が一闇バイトに関わってしまい、脅された場合には、決して犯罪行為に加担せず、勇気を持って警察に相談するよう強く呼びかけました。
大城氏:相談があれば警察は、皆さんや、必要によってはご家族も保護します。絶対に一人で抱え込まず、相談してください。
また、北海道警察が提供する防犯アプリ「ほくとポリス」について、「闇バイト」関連情報や不審者情報などを確認できることを紹介し、活用を推奨して講演を終えました。
これからアルバイトを始めようと思う学生や、SNSを日常的に使い、オンラインゲームなどでも見知らぬ人とつながることがある学生たちは、「闇バイト」を“ニュースの中の話”ではなく“身近に存在しうる犯罪”として受け止め、危機感をもって講演に耳を傾ける機会になったようです。
「DO SAVE HOME」プロジェクトでは、今後も北海道の若者を「闇バイト」という犯罪から守るため、関係各所と連携しながら啓発活動を進めていきます。