自分なりのオリジナリティのあるものを
生み出し続けていたいですね。
森 駿平 さん33歳
シルバーアクセサリー職人
1984年生まれ。鹿児島県出身。日本宝飾クラフト学院福岡校卒。
卒業後、福岡や東京で働きながら作品販売を行うも、
木彫り師の求人を見つけ2012年に阿寒湖畔へ移住。
2年間の木彫り経験を経て、自店舗でアイヌ文様をミックスした
シルバーアクセサリーを手掛けている。
TALK.01
なぜ釧路ではたらくの?
阿寒湖畔へ移住したのは、偶然見つけた求人がキッカケです。阿寒湖畔で住み込みの木彫り師を募集していて、ちょうど雑誌で木彫りのアクセサリーを初めて見かけたばかりの頃でした。「アクセサリーに、こういう表現の仕方があるのか」と記憶に残っていたんですね。自分の中で新しい何かを探していたところだったので、すぐに応募しました。木彫りをしながら2年間アイヌ文様を学び、自分のお店を開くことにしたんです。学び始めた頃からアイヌ文様の魅力に取りつかれてしまったので、まだここを離れるつもりはありません。
幼い頃からものづくりが好きだったのですがアクセサリー作家になろうと決めたのは、スカルモチーフにトライバルデザインが施されたネックレスを見て自分でも作ってみたいと思ったからです。トライバルはイギリスのシルバーアクセサリーブランド『クレイジーピッグ』のようなポリネシアを発祥とする部族デザインです。今考えると、その頃から民族的なデザインに惹かれていたんですね(笑)。ネックレスを見つけたお店に弟子入りを願い出たら学校を紹介されたので、シルバーアクセサリーの知識や技術をそこで身に付けました。今は鋳造というワックスにデザインを彫り込んで型を取る方法で、オリジナルアクセサリーを作っています。
TALK.02
阿寒湖畔のこと
阿寒湖畔へ来たばかりのときは、北海道さえも訪れたことがなかったので驚きの連続でした。キレイな雪を見たこともありませんでしたし、「湖が凍るだなんて嘘だろ!」と思いました。自然風景に惹かれる性格ではないのですが、ゲームの世界みたいだな、と(笑)。
木彫りを通して学んだアイヌ文様も地域ごとに特色があって面白いですね。道南と道東でも異なり、阿寒湖畔は国際的にも有名な砂澤ビッキというアイヌ彫刻家を主体としたビッキ文様が特徴です。例えばアイヌ文様は対照的なシンメトリーデザインがよく見られますが、ビッキ文様は荒々しく不規則な印象を覚えます。それをワックス型でデザインすると木彫りでは表現できない柔らかさが出てくるんです。またシルバーはトライバルのようなポリネシアやケルトデザインと相性が良いんですが、アイヌ文様を含めて自然がモチーフ。だからこそ、アイヌ文様をシルバーデザインにすると面白いだろうなと思いました。
TALK.03
地元の人たちのこと
商店街の人たちからは、息子のように面倒を見てもらっています。商店街で行う光の森や星空ツアーにも誘ってもらったり、お惣菜を分けていただいたり…、温かくて居心地がいいと感じますね。また、お店ではアレンジして阿寒のアイヌ文様をデザインしているんですが、お祭りで訪れていたアイヌの方に「新しい表現で面白い」と言ってもらったことがあったんです。本場の方に認めてもらったようで、嬉しかったですね。
TALK.04
才能の赴くまま阿寒にしかないものを
自分だけのデザインで
偶然見つけた求人をキッカケとした移住でしたが、今の生活が気に入っているので今後も阿寒湖畔で作品作りを続ける予定です。何かハプニングがない限りは(笑)。東京にも住んでいましたが幸いなことに物欲が薄いので、不便を感じたことはないですね。何かを作っていることが一番楽しいので、この場所にいた方が作品作りに没頭できます。阿寒のアイヌ文様はここにしかないものですし、それまでは見たこともありませんでした。だからこそ今はここでさまざまな作品に刺激を受けて、見つけた法則性から自分なりのオリジナリティのあるものを生み出し続けていたいですね。具体的にはレザーにアイヌ文様を施して、キーホルダーや財布を作ってみたいと思っています。
しかし、このお店も露天商のような形から始まったので、もう一度原点に戻るのも良いと思っていますが、今は阿寒湖畔での生活に満足してますし、創作意欲も湧いているのでこの地で頑張っていきたいと思ってます。
森 駿平さんの好きな
モノ・コト・トコロ
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長渕剛ミュージック
同郷のスターとして気になる存在で、歌も全般的に聞きます。お店では雰囲気に合わないので、歌のないインストゥルメンタル系の曲を流します
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アイヌ文様を施したアクセサリー
木彫りでは直線的で力強いアイヌ文様も、シルバーに施すと曲線が美しく柔らかい印象に。それがシルバーアクセサリーの魅力
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愛用道具
ワックス型をデザインするときに使っているヤスリ。一番固いワックスを使っているので、ブランドにはこだわらず使い勝手の良いものを愛用