釧路人 7千坪の広大な大地で
動物たちと暮らしてます!

桑原 康生(くわはら やすお)さん
vol1

桑原 康生くわはら やすお さん55歳

オオカミの森

1962年生まれ。長野県出身。青山学院大学英文科卒。
アラスカ大学野生動物管理専攻後、土浦市でオオカミ7頭、
ヒョウ1頭と暮らす。
1995年に標茶町虹別へ移り住み、合計27頭のオオカミと
暮らしてきた。

TALK.01

都会から田舎へオオカミで本来の北海道を取り戻す

私は虹別に移り住んで22年目。飼っていたオオカミも今は最後の1頭になりました。物心付いた頃からのオオカミなどの動物好きが高じて、現在の私がいます。
私が生まれたのは長野県で大学は東京。大好きな英語を使って動物に関わる仕事がしたいと考えたときに野生動物研究者という道を見つけたんです。そこで野生生物の研究が盛んに行われているアメリカのアラスカ大学へ進学し、生態系について学びました。その後、日本に戻り茨城県土浦市という人口密集地で1頭のヒョウ、7頭のオオカミと暮らしていたんです。田舎へ移り住みたいとは思っていたのですが、都会でオオカミを飼っていた私なので場所にこだわりはありませんでした。偶然虹別でマナーハウスを営むオーナーと出逢い、いい場所があるとオススメしてもらったんです。虹別へ移り住んでからは、7千坪の敷地にオオカミの森を再現し、オオカミによって取り戻せる生態系について学べるネイチャースクールを始めました。最後のオオカミも16歳。オオカミの飼育は最後となりますが、今後もスクールで生態系の重要性を伝えていければと考えています。

TALK.02

オオカミの絶滅で壊れた生態系 全てはつながっている

ネイチャースクールでは毎年、一度絶滅したオオカミを再導入し生態系を取り戻したアメリカのイエローストーン国立公園へ研修に行っています。そこではシカの一種であるエルクが増え、生態系が崩れていたんです。同じことがこの北海道でも起きています。崩れた生態系を元に戻すには、絶滅してしまったオオカミを復活させること。オオカミの主食は世界的に見ても、シカなどの有蹄類。非常に賢くリスクを避ける生き物なので、イエローストーン国立公園でも人間を怖がる傾向にありました。シカの捕食者は本来オオカミであり、人間のハンターだけではありません。それに人間のハンターは強い個体を狙う傾向にありますが、オオカミは狩りがしやすい弱い個体から狙います。本来、強い個体は生存競争に残るべき優良個体なんです。  現在、道内はヒグマが人里に下りてきたり、エゾモモンガが減少傾向にあるなど、自然に関する問題を抱えています。ハンターを奨励して駆除することも手だと思いますが、オオカミを北海道の自然に戻すことが最良の手だと私は考えています。全てが結びついているのが生態系なんです。

TALK.03

人生の先輩から若者たちへのメッセージ

ひとつは何事にも真剣に取り組むこと。ひとつは視野を広く持ち、オタクではなく専門家を目指すことです。人にはそれぞれの生き方があり、それを変えるのは難しいことです。現在、私の住んでいる場所も見渡す限り林野に囲まれ、道路は舗装さえされていない砂利道の先。これを寂しいと思う人は、ここでの生活はできません。  人も生態系の一部です。誰もがどこかで繋がって影響し合っているんです。だからこそ興味のあることに真剣に取り組み、知識を蓄え、コミュニケーションを交えて欲しいですね。

私の新聞活用術

  • 野生動物に関する記事をスクラップすること

    桑原 康生さんの好きなモノ・コト・トコロ

    生態系を学んでいる私にとって、野生動物に関する記事は欠かせません。道東エリアは特に野生動物に関する記事が多く載っていると感じます。  野生動物の研究には、客観的事実として数字や被害が載っているので参考になります。またスクラップすることで、短い時間で見返すことができる利点もあります。

  • 記憶に新しいのは 「札幌市の民家近くでヒグマ駆除」のニュース

    桑原 康生さんの好きなモノ・コト・トコロ

    2012年の春、札幌の民家近くに2〜3歳と思われるヒグマが出現し、北海道猟友会により被害が起こる前に射殺した事件がありました。その様子を各社が報じたことにより、役所に苦情が殺到したという記事です。ヒグマが人里に下りてくる理由のひとつには、シカの食圧による食性の変化。結果として食物不足となったことが考えられます。駆除する、しないにかかわらず、根本を見直さなければならないのではと感じます。

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