今年、新聞制作を行ったのは弘大Hub'sに所属する12名の学生。昨年同様、北海道新聞社「NIE推進センター※1」の指導を受けて制作を行いました。まず考えたのは紙面のコンセプト。メンバーで議論の結果、今年は北海道の高校生をターゲットに、弘前大学での「学ぶ」「暮らす」「楽しむ」の3つのコンテンツを決定。これから進路を考える高校生の「知りたいこと」を想像し、弘前大学の魅力、そして弘前暮らしのリアルな日常を伝えることにしました。
今回の新聞の編集長、人文社会科学部2年の村山祐見さんは「弘大や街を知ってもらい、同時に親元から離れる大学生活への不安を払拭し、未来の後輩たちの背中を押す紙面にしたいと考えました」と意気込みを語ってくれました。
※1 NIEとはNewspaper in Educationの略称で、学校などで新聞を教材として活用する国際的な教育活動。1930年代のアメリカで始まり、日本でも85年(昭和60)に日本新聞協会が提唱して積極的に推進し、現在は全国各地の学校で新聞活用が進められています。道内では96年(平成8)6月に北海道NIE推進協議会が設立され、報道12社を軸に道教委、札幌市教委と連携しています。
コンセプトが決まったら、次に取りかかるのは取材、調査、記事制作。今回は「学ぶ」「暮らす」「楽しむ」の担当を数人ずつに振り分けてそれぞれで執筆。その後、コンテンツごとにひとつの記事にまとめることにしました。
弘大Hub'sのリーダーで「学ぶ」を担当した人文社会科学部3年の髙木雄基さんは「フィールドワークの学び」に注目し、学生が市や地域企業と協力して開催するマルシェ(市場)について執筆。「記事に盛り込む内容は、実体験を基にしつつ、友人にも取材をしながら集めました」。
そして、「学ぶ」の中できのこに関するサークル活動の記事を担当した農学生命科学部2年の小西歩実さんと飛石ゆうきさんは「記事内には『白神山地』という地名が出てきますが、その名称だけでは北海道の高校生に伝わらないかもしれない、という指摘から、読み手の環境を意識することに気づきました」(小西さん)、「限られた文字数で必要なことをわかりやすい文章にするのは難しいですね。個人の感想を入れずに、主観でなく客観的に書かなければいけないことにも試行錯誤しました」(飛石さん)とそれぞれ話してくれました。
「暮らす」の担当となった理工学部1年の嵯峨拓人さんは「アパートでの1人暮らし」が題材。「大学生活と同時に始まる1人暮らしは高校生が特に不安に感じること。実際の様子を伝えることで『心配いらないよ』というメッセージを送りたいです」。
また、理工学部3年の森明日香さんは、「寮生活」を担当。「資料だけでは把握しきれなかったことが、実際に暮らしている寮生への取材を通して分かりました。新聞制作に携わることで、触れることのなかった範囲まで知識が広がってうれしいです」と笑顔で語ってくれました。
執筆した記事は、題材が狙い通り伝わるものになっているか、さらに掘り下げられる点はないかなど、密に話し合い、チェック作業を重ねます。
「楽しむ」を担当し、弘前のカフェ文化やアップルパイガイドマップなど、街の魅力を紹介した理工学部3年の坂下伶菜さんは「具体例を入れ込むこと、同じ言葉を使い過ぎないこと、また、人それぞれで『かわいい』の感覚が違うことなど、自分1人だと分からない部分に気付き、表現の方法を学べました」と難しかったことも語ってくれました。
また、新聞裏面の学部紹介でデザインを担当する教育学研究科大学院1年の小杉奈央さんと教育学部3年の清藤慎一郎さんは「各学部のキャラクターにゲームの視覚的な要素を入れ、目でも楽しめるように工夫しました」とポイントを語ってくれました。
新聞制作の指導は今回で2度目となる北海道新聞社NIE推進センター長・渡辺多美江さん。「前回指導した時の1年生だったメンバーが今回、成長していることを強く感じました。こちらがアドバイスすることで原稿が目覚ましく変化していき、皆さんの感度の良さ、潜在能力の高さには本当に驚かされました。しかも、自分の言葉で表現できる人ばかり。とても頼もしく、楽しい時間でした」と締めくくりました。
伝える書き方や見せ方に悩み、考え、そして自分なりの答えを見つけ出す。それらの過程で得るものは、普段体験のできないかけがえのないもの。今回の新聞制作での経験は、メンバーそれぞれの未来で、きっと大きな糧となってくれるはずです。