情熱が創る、夢を育む。

映画は、幾人もの人が関わり、長い時間をかけて創り上げる総合芸術。それは、強い意志と熱い情熱が紡ぐエンターテインメントの世界。日本映画界をリードする二人の監督に、非日常の美学を聞いてみた。

のぼうの城 監督 犬童一心 ×監督 樋口真嗣

フォーマットが変わっても映画の本質は変わらない

—お二人にとって、映画の未来とは?

樋口監督:いま映画はデジタルの時代。以前はデジタルでは映画の質感を表せなかったけど、いまではフィルムと同じような質感を表現することができる。その 一方で、フィルムなら100年前に撮った映画もいまの機材で見せることができるんですね。では、現代のデジタルが100年後にあるのかどうか?  映画は便利になった反面、本質的なことが失われてきたのではという心配があります。

犬童監督:映画って本来フイルムだと思うんです。しかも、非効率的な作業をいろいろな人間が集まって作り上げる行為。そういう 一 種儀式的な「映画」というフォーマットは 一 度終わったと言えます。しかし、フォーマットは変わっても、コミュニケーションのツールであることには変わりはありません。映画は、世の中が、人間の世界が良くなるために存在するものとして、これからも続いていくものだと思います。

のぼうの城1

のぼうの城2

のぼうの城3

学生を交えたのぼうの城トークショー。両監督が成田長親、石田三成の兜をかぶって会場を沸かせた。
(9月12日 パセオ テルミヌス広場)

映画って何なんだろう?と問い続けることが必要

─それでは、映画作りで大切にしていることはどのようなことでしょうか?

樋口監督:ぼくは、映画ってどういうものなのかを知りたくて映画を作っています。映画は自分の計画通りに撮れるものではなく、いままで得てきた感覚とか知識とかを積み上げることで、より映画として完成していくもの。「映画になっていく」という予想を立てて、それを確かめる作業というのかな。だから常に映画がどのようなものか分からないところがある。謎を解こうとして作っているのかもしれません。

犬童監督:撮影をしていて、絶対この手法の方が「いい絵」になるということがある。でも、なぜそうさせるのか?  多くは理由がないわけです。だってそっちの方がいいもんと、自問だけでみんなやっている。でも実は深いところがあって、その深いところの先へ行かないと、周りの人の心を動かすことはできないのです。なぜって言われたとき説得できなきゃいけない。それは 一 緒に仕事をしている人に対してもそうだし、お客さんに対してもそうです。

─これから映画作りを目指す若い人たちにメッセージをお願いします。

樋口監督:映画以外のことをいっぱい見たり聞いたりしておいた方がいいと思います。映画作りを始めると、映画以外のことが吸収できなくなる。映画に関することなら、後からいくらでも学ぶことはできます。一 つでも二つでもでもいいから、他に好きなことを極めておいた方がいいと思いますよ。

犬童監督:映画で大切なのは、人とのコミュニケーション、人を楽しませるエンターテインメントであること。それらを持って映画に関わってほしいですね。そして、常に「映画って何なんだろう?」という疑問を持つこと。映画の道を目指すなら、「映画監督になりたい」ではなく、「映画を撮りたい」と思うべきですね。映画は、撮りたいものが積み重なって仕事になっていくもの。映画は、撮りたいものが積み重なって仕事になっていくもの。映画監督に就職はできないのです。

映画「のぼうの城」あらすじ

天下統一を目指す豊臣秀吉が唯一落とせなかった城があった。その名は「忍城(おしじょう)」。軍勢はわずか500人。総大将は、才能も勇気もないが人気だけはある“(でく)のぼう様”。秀吉の命を受けた石田三成率いる2万人の大軍に包囲され、さらに城ごと水没させられる水攻めで追い詰められる。忍城、絶体絶命のとき、のぼう様が打った策とは? 北海道でロケが行われ、全道から4千人ものエキストラが参加し、犬童一心×樋口真嗣のダブル監督により映画化した超大作。

キャスト:
野村萬斎 榮倉奈々 成宮寛貴 山口智充 上地雄輔 山田孝之 平岳大 西村雅彦
平泉成 夏八木勲 中原丈雄 鈴木保奈美 前田吟 中尾明慶 尾野真千子
芦田愛菜 市村正親 佐藤浩市
監  督:
犬童一心 樋口真嗣 脚本:和田竜 小学館「のぼうの城」
音  楽:
上野耕路 主題歌:エレファントカシマシ「ズレてる方がいい」

©2011「のぼうの城」フィルムパートナーズ

犬童一心 監督
1960年生まれ、東京都出身。「二人が喋っている。」(97)で長編監督デビュー。「金髪の草原」(99)、「ジョゼと虎と魚たち」(03)、「メゾン・ド・ヒミコ」(05)、「ゼロの焦点」(09)など、数々の話題作を手掛ける。
樋口真嗣 監督
1965年生まれ、東京都出身。「ゴジラ」(84)に造形助手として参加。特撮監督を担当した「ガメラ 大怪獣空中決戦」(95)で日本アカデミー賞受賞。ほか「ローレライ」(05)、「日本沈没」(06)などを手掛ける。

映画の道を目指す人たちにお話をお聞きしました!

高塚愛梨さん

札幌放送芸術専門学校
高塚愛梨さん
役者を目指して日々勉強しています。
演技は感情の解放。泣くのも、怒るのも、叫ぶのも、自分をむき出し
にすることを学んでいます。夢は、人の心に響くような大女優です!

小川武士さん

札幌放送芸術専門学校
小川武士さん
人生は一度きり。俳優として大きく生きたい。
一生演技に携わっていたいです。時代劇、アクション、青春ものなど、
幅広いジャンルで活躍する実力派の俳優を目指したいと思います。

今井暖菜さん

札幌放送芸術専門学校
今井暖菜さん
「のぼうの城」エキストラ参加がきっかけで、夢は映画監督に。
いまは演出、企画、カメラの使い方を学んでいます。いつかエンター
テインメントを盛り込んだ戦国の時代劇を撮りたいです!

今野裕哉さん

北海道大学
今野裕哉さん
大学の映画研究会で自主製作の映画を撮っています。「のぼうの城」
では石田三成の軍のエキストラとして参加。撮影は長時間、
まさに我慢の現場。大変貴重な経験ができました。

  • EDIT:北海道新聞社広告局/nu
  • TEXT:高崎 克秋
  • PHOTO:ハギノ タカユキ
  • 記事公開日:2012年10月26日 朝刊 掲載

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