1時限目

終活の時間

一般社団法人 シニアライフサポート協会

代表理事 小番(こつがい)一弘さん

 これからの人生をどのように過ごせばいいのか、誰もが一度は考えるのではないでしょうか。日々そういった悩みの相談にのり、サポートをしている小番さんは、母親の介護がきっかけとなり、今の仕事を始めました。

 最初は介護のことを全く知りませんでしたが、職安でヘルパーの資格を取得できる講座を見つけ、受講。このときに介護や認知症のことに興味を持つようになったそうです。

 その後当直のヘルパーや、高齢者住宅での管理・運営の仕事を通じ、入居したいのに条件のミスマッチにより決まらず悩んでいる人が多い事を知り、入居希望者と高齢者住宅を互いにマッチングさせ、困りごとを解決する仕事を始めることになります。


小番さんのもとには色々な悩みを抱えた人が訪れますが、一番多い悩みは住まいのことだそうです。一言で住まいといっても、引越しや不要品処分・不動産処分・身元保証人など多岐にわたります。他にも健康や医療・介護・遺言・相続・葬式・お墓など、悩みは尽きることがありません。「困りごとをいっぱい抱えたまま年を重ねると、中にはうつ病や経済的に破たんする人も出てきてしまいます」と小番さん。

困りごとはより少ないほうが望ましいですが、実際にはどうすればいいのか。小番さんのいるシニアライフサポート協会では、健康に輝き続けて人生の美しい締めくくりを目指すシニアを「プラチナシニア」と定義づけ、からだの健康・頭の健康・経済の健康・心の健康 という豊かな人生に必要な4つのテーマを設け、プラチナシニアを目指すための10か条を呼びかけています。
 小番さんは「一番の社会貢献は最期まで元気でいること。10年後も20年後も健康で生きがいのある人生を送ることができるといいですね」と皆さんにメッセージを送り、終活の時間を締めくくりました。

2時限目

音楽の時間

札幌交響楽団

指揮者 佐藤 俊太郎さん


今年の4月から札幌交響楽団指揮者に就任した佐藤さん。指揮者の仕事とはどういうものなのか、セミナー当日は札響の指揮者として初仕事だった佐藤さんにお話してもらいました。

指揮者の仕事は大きく分けると、①コンサート②オーケストラとのリハーサル③楽譜を見ながらの勉強、の3つに分かれるそうです。

まず、コンサートは1回の公演につき約2時間かかります。これは皆さんが最初にイメージする指揮者のお仕事ではないでしょうか。

その次のオーケストラとのリハーサル。リハーサルにかかる時間は短い時で1日、長くても3・4日だそうです。思っていたより短い!と思われる方が多いと思いますが、プロの指揮者とプロのオーケストラが演奏する場合は、互いに前もって勉強や練習を重ねたうえでリハーサルするので、それほど時間をかけなくてもいいそうです。佐藤さんがロンドンのオーケストラで指揮をしていたときは、当日に3時間だけリハーサルをしてからコンサートをする、ということが何度もあったというから驚きです。

3つめに楽譜を見ながらの勉強ですが、長い時で3ヶ月かかることもあるそうです。実際に佐藤さんが書き込みをした楽譜をスライドで表示し、曲を流しました。複雑にたくさんの音符が書かれた楽譜ですが、音楽にするとあっという間に終わってしまいます。「指揮者は指揮棒を振りながら、すごいスピードで常に楽譜をめくらないといけないんですよ」と佐藤さんは笑顔で教えてくれました。

喫茶店など音楽がかかっている場所での勉強は難しく、外出先ではBGMの聴こえないカフェのテラス席や飛行機・電車の中など、色々な場所で時間をかけて勉強しているそうです。

佐藤さんはロンドンの大学に入学後、重い病にかかって大学を休学したり、妹さんが事故に遭ったりと大変な出来事が続きました。「人生はいつ終わるか分からない、本当にやりたいことがあるなら、それをやってから死ななくてはいけないと強く感じました」と、佐藤さん。

そんな時、友人から贈られたモーツァルトのCDに衝撃を受け、周りの人の協力を得ながら自分でオーケストラを作って2年間で18回コンサートを開催しました。出演料が払えないのでトンカツ弁当を作ってオーケストラのメンバーを募るなど、時には型破りなことをして努力を続けました。佐藤さんはそのときの思いを「私の本当にやりたいことは決まっていて、それをやってみよう!という気持ちがとても強かったです。勢いというのは非常に強いものだなと感じました」と語りました。これらの行動が実を結び、プロの指揮者の道を歩むことになったのです。

終始、温和でとても穏やかな印象の佐藤さんがこのような大胆なことをするなんて、と皆さんも驚いたのではないでしょうか。やりたいことを実現するために、時には情熱の赴くままに行動することが非常に大切だということを教えていただきました。

参加者の感想

「終活の時間」について
  • わかりやすく理解できた、参考になった
  • ピンピンコロリを目指し、日々努力しなくては!
  • 生涯学習や社会貢献にがんばりたい
「音楽の時間」について
  • コンサートによく行くが、知らない世界の話を聞けてよかった
  • 人柄が出ていて、心地よかった。貴重な時間を過ごせた
  • 仕事の内容が具体的にわかった

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1時限目

相続の時間

一般社団法人 日本相続知財センター札幌

ファイナンシャルプランナー/相続診断士 本田 華織さん

 今回は相続の基本やトラブル事例の他に、最近話題になっている空き家問題の対策についてもお話してもらいました。本田さんのもとにも、子供に迷惑はかけたくないと思っているが、実家の古い空き家を処分できなくて困っているという相談が多いそうです。

 最初に本田さんは「今、ご自宅で亡くなられる方はどれぐらいいらっしゃるかご存知ですか?」と会場の皆さんに質問しました。昭和26年頃は8割近くの人が自宅で亡くなっていましたが、平成21年になると約1割に減少し、残りの9割の人は病院や施設で最期を迎えているそうです。ということは、亡くなる間際から家が空き家になっている可能性が高いということなので、他人事ではなく皆さんに関わりのあることではないでしょうか。

 争続対策の事前準備はいくつかありますが、まずは我が家の現状を確認することが大事です。お住まいの市町村から送られてくる固定資産税納税通知書には、納税額の他に面積や評価額等が書かれています。自分名義の土地や建物にはどれぐらいの価格がついているのかをぜひ確認して欲しい、と本田さん。いざ家などを売るとなっても、解体費や遺品整理の費用がかかり、自分で予想している通りの金額が手元に残らないこともありますので、こういった費用のことも考えておいたほうがいいでしょう、とのこと。

 家族が後から揉めないように準備することも重要です。例えば相続人が子供3人だけの場合、法定相続分は3人の子供、それぞれ平等に3分の1ずつですが、お墓や仏壇を守っている子供・親の面倒をみた子供・何もしていない子供がいたとしても、みんな同じ3分の1です。確かに法律は平等ですが、少し不公平な気がしますね。本田さんは「こういった不公平さのバランスをとって、揉め事を未然に防ぐことも親御さんの役目かと思います」と訴えました。


さらに、認知症等の病気になってしまった場合の準備も必要です。自分の判断能力が不自由になり、認知症等になった時のために、信頼して任せられる人と元気なうちにお互いに契約を交わす「任意後見契約」を事前に準備しておくと安心です。

また判断能力が不十分になってしまった後に後見人を選ぶことを、「法定後見制度」といって家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをし、裁判所の審判により後見人を選んでもらうことになります。近年は親族より司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることが多いようです。専門家が後見人になると、専門の知識があるので安心ではあるものの、亡くなるまでずっと専門家に費用がかかるため、任意後見契約を選ぶ人も増えてきています。自分が認知症等になった後に「誰に任せたいかを自分で決められるのなら、元気なうちに準備しておいたほうがいいです」と本田さんは勧めていました。

他に相続トラブルを防ぐ有効な手段である、公正証書遺言のポイントについても教えてもらいました。最後に本田さんは「思い込みは今すぐやめ、このまま何もしないとどうなるかを正しく知ってください。そして悩まず信頼できる専門家に相談してみてください」と会場の皆さんに呼びかけました。

健康の時間

NPO法人 地域活性化貢献会議

常務理事 髙坂 聖美さん


若さを保つためには、まず姿勢から。会場の皆さんと一緒に肩を上げ下げして、姿勢に影響の大きい肩こりを解消する簡単な運動からスタートしました。少し体を動かし、リラックスした状態でセミナーに臨みました。

「成長ホルモン」という言葉を聞いたことはありますか?別名若返りホルモンと言われ、骨や身長を伸ばしたり、脂肪の燃焼、肌や筋肉などの修復・再生、老化防止の効果があるホルモンです。

この成長ホルモンを出すためには、①質の高い睡眠②筋力トレーニング③有酸素運動④空腹状態⑤食事・栄養素 が重要とのこと。

まず質の高い睡眠をとるためには、朝起きて朝日をしっかり浴び、昼間は活動的に動くことが重要です。「成長ホルモンは夜間の睡眠時に分泌されるため、なるべく24時までには寝るようにしましょう。特に22時から2時までが一番いい時間帯なので、22時頃までに布団に入るのがお勧めです」と髙坂さんがアドバイス。また、ストレスがあると睡眠の質も悪くなるので、ストレス軽減に役立つ腹式呼吸の方法も教えてもらいました。

続いてはゆっくりとした筋肉トレーニング。いすに座った状態からゆっくり立ち、座る手前までゆっくりと腰を下ろすスクワットを会場の皆さんと一緒に行いました。終わった後は「意外ときついね」という声があちこちで聞こえてきました。

次は有酸素運動です。以前は成長ホルモンの分泌に有酸素運動は意味がないと言われていましたが、最近の研究では血管を拡張させ血流を良くすることで、分泌を促すことが分かってきたそうです。ここでも髙坂さんに簡単にできる運動を紹介してもらいました。

そして意外なことに、お腹が空いている状態でも成長ホルモンが出るのだそうです。これには会場のみなさんも驚きの表情。逆に食べ物で分泌を活発にするためには、肉類・カカオ・大豆・クルミ・しじみを摂取するといいとのこと。チョコレートが疲労回復に良いという説がありますが、これは成長ホルモンに働きかけることによるもの。また、しじみは冷凍すると、分泌を促進するオルニチンの量が8倍にもなるんだとか。

このように運動や食事、生活習慣で若返ることができることを教えていただきましたが、「いちばん大事なのは家でも継続して行うことです」と髙坂さん。お家でできることから少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

参加者の感想

「相続の時間」について
  • わかりやすい話だった
  • 任意後見人の契約方法がわかってよかった
  • テレビのように聞き流すことがなくわかりやすい
「健康の時間」について
  • 気軽にでき、続けられそう
  • 身体を動かすことができて楽しかった
  • 身体が軽くなった

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1時限目

介護の時間

株式会社ランドネクサス

札幌オフィス所長/一級建築士 所 輝和さん


有料老人ホームネクサスコート

理学療法士 藤田 裕樹さん

作業療法士 阿部 友美子さん

言語聴覚士 矢野 沙弥香さん

 介護は高齢化が進む以上、切っても切れないものです。今回は1・2時限目とも介護の時間として、実際の介護施設で高齢者のサポートをしている4名の講師の皆さんに、お仕事内容や介護予防についてじっくりお聞きしました。

 内閣府が行った高齢者の意識調査によると、将来不安に思っていることの1位は、自分や配偶者の健康・病気で、体力の衰えや認知症について心配している人が多いとのこと。将来を考えるとき、年齢を問わず誰しもが頭をよぎる心配事なのではないでしょうか。

 国では介護予防を3段階に分けて以下のように定義しています。①要介護状態の発生をできる限り防ぐ(一次予防)②要介護状態でも、悪化をできる限り防ぐ(二次予防)③要介護状態の軽減を目指す(三次予防) 介護が必要になったから予防しない、というのではなく、どの状態でも更なる悪化を防ぐことが必要だということです。

 では、実際に介護が必要になってしまう原因は何なのか。厚生労働省によると1位は脳血管疾患(脳卒中)、2位は認知症、3位は高齢による衰弱、そして転倒・骨折、と続きます。脳卒中と認知症を防ぐのはなかなか難しいかもしれませんが、3位以下は病気ではなく老化現象によるものです。「身体機能は適切な対策を行えば、維持・改善することが可能です。年を取れば仕方がない、ということではないのです」と所さんが話してくれました。

 ここで実際に介護の現場で活躍している皆さんに、それぞれの仕事を紹介してもらいました。

 まず理学療法士は、日常で必要な立つ・歩くなどの動作を訓練や運動を通してサポートしていくお仕事です。例えば腰痛の人に対しては、100人いれば100通りある痛みの原因を見つけ出し、それを解決するために支援していきます。「湿布やマッサージで痛みがとれるかもしれませんが、痛みの原因が分からない限り、時間が経てば再発するかもしれません」と藤田さんは言います。最近話題になっている、ロコモティブシンドローム(運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態)を予防するためにも欠かせないお仕事ですね。


続いては、作業療法士についてです。着替えや入浴や食事の他、仕事や趣味・遊びなどの日常生活を送れるようサポートする、その人の趣味などを考慮し、手芸や陶芸などを通して様々な動作ができるようにしていきます。また精神面でも寄り添い、生き生きとした生活を送れることを目指します。現場では、その人の体調や体力に合わせて、関節の可動域を広げるための運動や歩行体操を行ったり、皆さんで野菜の種や苗を植えたりと、入居者の生活が充実するような仕事を行っているそうです。

最後の言語聴覚士は、理学療法士・作業療法士と比べて比較的歴史が浅い職業で、主に言葉を聞く・話す・文字の読み書き・お食事の嚥下(えんげ)、飲み込みのリハビリを行います。具体的にはご飯をお粥にしたり、おかずを一口大に切ったりムース状にしたりと、その時の本人の状態を随時確認し、食べやすいようにします。また、失語症などによりコミュニケーションが思うようにいかない場合は、言語の他に筆談や絵など、その人にいちばん合うコミュニケーション方法を考えたりもするそうです。

実際にこれらの3つの職種が連携することにより、介助がなければ食事をとれなかった人が、座って自力で食事できるようになった事例もあるそうです。頭を使ったり運動することは身体・認知機能を高め、介護予防につながることがよく理解できました。

介護の時間

株式会社ランドネクサス

札幌オフィス所長/一級建築士 所 輝和さん


有料老人ホームネクサスコート

理学療法士 藤田 裕樹さん

作業療法士 阿部 友美子さん

言語聴覚士 矢野 沙弥香さん


2時限目は引き続き、施設の活動や地域ですすめる介護予防の取り組みについて説明してもらいました。

介護中に最も危険なことは転倒です。高齢化に伴う筋力や視力の低下、平衡感覚が衰えてバランスがとれなくなり転倒しやすくなるそうです。高齢者が転倒すると骨折することも多く、日常生活の質が下がってしまいます。

施設では、歩くために必要な身体の動きを調整する機能を養うため「ふまねっと運動」という、人が1人立てる大きさのマス目でできた大きな網を床に敷き、網を踏まないようにゆっくり歩く運動を行っているそうです。うまくステップを踏むことができ、周りで見ている人から拍手が起きて盛り上がっている様子を動画で紹介してもらいました。高齢者に限らず、若い人が参加しても楽しめそうな運動です。

介護予防では、脳の機能低下を防ぐことも重要です。そのためには脳を働かせることが有効になりますが、会場の皆さんは実際の脳トレーニングに挑戦。まずは、ウォーミングアップとして後出しジャンケンで負けるゲームをしましたが、意外と難しく、皆さん苦戦しながらジャンケンをしていました。その後、3×5と9+4はどちらが大きいかなどを当てる計算問題や、1字隠れた状態で円状に置かれている言葉から時計回りに読んで単語を当てるクイズなど、高齢者でなくとも難しいゲームに会場内はとても盛り上がりました。

このようなクイズやパズルなどを取り入れながら、地域で取り組んでいる「脳活塾」では、グループでの助け合いから交流が生まれ、仲間づくりにも一役買っているそうです。「正解・不正解を気にせず、ご自身のペースで楽しく取り組むことが大事」と阿部さんは言います。

日常生活で大事なことの1つとして食事が挙げられますが、楽しく食事をするためには口腔内のケアや食物を飲み込む機能がとても大事です。現場では、介護士や看護師はもちろん、外部の訪問歯科と連携し、歯科衛生士による口腔ケアの指導や歯科医の往診・治療を行っているそうです。会場では、誤嚥(ごえん)の予防に役立つ嚥下(えんげ)体操を実践しました。食事前にテレビを見ながらでもできる簡単な体操で、「もし、周りに飲み込みが不自由な人がいたら、ぜひこの体操を教えてあげてください」と矢野さんは呼びかけました。

老人ホームと地域が連携して行う介護予防は、今後さらに重要になってくることでしょう。誰もが自由に、費用をあまり気にせずに参加できるとのことで、これは非常に意義のあることです。

最後に所さんは「介護を受ける人も行う人も、不安な気持ちを分かち合い、情報交換できる仲間が必要です。介護は本人だけの問題ではないので、周囲に相談をしたり、逆に相談に乗るなど、多くの人が意識して広めていくことが大事だと思います」と締めくくりました。

参加者の感想

「1時限目」について
  • 自分や親のことを考えるきっかけになった
  • 療法士の役割がよく分かった
  • 介護予防をすることにより健康面・経済面でとてもよいことがわかった
「2時限目」について
  • 脳活ゲームがよかった
  • 嚥下体操は参考になった
  • 有意義だった

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