器に残る 思い出を継ぐ金
vol17
髙比良 哲 さん39歳
金継ぎ師
1980年、奈良県生まれ。ハワイ州立大学大学院を卒業後、帰郷。金継ぎに興味を持ち、金継師である加藤次彦氏に師事。2013年から本格的に学び始める。14年釧路へ移住。17年釧路にて金継ぎ教室を始める。
TALK.01
どんなお仕事をしていますか?
釧路にあるセレクトショップ「send」のスタッフとして働く傍ら金継ぎを請け負い、教室も行っています。金継ぎは欠けたり割れたりしてしまった古い器を蘇らせる日本古来の伝統技術です。西洋の修復と違い、金継ぎは漆でつなぎ合わせるため食器として再度使うことができます。傷の部分を隠すだけではなく、付加価値も与える技術ですね。継ぎ目に金や銀を蒔いた器は、日本のわびさびに通じる趣を感じる仕上がりになると感じています。
TALK.02
はじめたキッカケはなんですか?
元々古い器が好きで、集めたり美術館へ見に行ったりしていました。ハワイにいた際にホノルル美術館でわざとヒビのある茶碗を作ってそこに金継ぎを施した創案者、本阿弥光悦の作品を見て金継ぎに興味を持ったんです。奈良県に戻り1日体験から始めたのですが、「金継ぎをやるならちゃんと習った方がいい」と知り合いに言われ、現在の師である加藤次彦先生を紹介してもらうことになりました。釧路へ移住してからは年に1、2度赴いたりメールで師事をしており、今年で7年目を迎えます。
TALK.03
金継ぎに対する想いを教えてください。
教室は希望者がいた際に、できる限り少ない人数で行います。漆は乾くのに時間がかかるので、通常、完成までに2ヵ月以上お待ちいただいています。sendでは手がけた器の展示会や販売を行うことも。金継ぎ依頼は高級な器に限らず、気に入っていたり長く愛用している器だったりすることが多いです。その思い入れを守れるようにがんばろうと心がけて金継ぎを行っています。