お金で買えない価値。もの作りのおもしろさ
加藤 康弘 さん56歳
造形作家
1963年生まれ、釧路市出身。幼少期から絵画や造形に親しんでおり、旧釧路短期大学付属高等学校在学時には高文連絵画展で釧根地区大会最優秀賞を受賞。趣味で主にプラモデルを製作していたが、90年に旧日本海軍艦艇模型保存会の大型艦艇模型に出会う。同年、保存会へ入会しフルスクラッチビルドを始める。
TALK.01
どんなものを制作していますか?
既存のプラモデルを流用せずに、各種材料を用いて部品から自作するフルスクラッチの戦艦模型を製作しています。1990年から全9隻の展示戦艦を完成させ、現在10隻目となる太平洋戦争で最後まで残った唯一の戦艦・榛名(はるな)を手がけています。200分の1スケールで年数が経っても壊れにくい耐久性に気を配り、模型であっても本物と同じ素材にこだわっています。甲板は1mm以下の幅しかない木片を貼り合わせ、ロープの巻き方まで当時を再現しています。また直径1mm以下になる戦艦の窓までしっかりとガラスをはめ込んでいます。
TALK.02
はじめたキッカケはなんですか?
私がフルスクラッチビルドを始めたのは1990年のことで、それまでは戦艦や空母のプラモデルが好きで製作していました。そんなとき全国に900人以上の会員を持つ旧日本海軍艦艇模型保存会の方が手がけたフルスクラッチビルドの戦艦完成写真に出会ったんです。同年すぐに保存会の事務所で数々の戦艦を目にして、ダイヤモンドの弾丸に打ち抜かれたような衝撃を受けました。この作品に出会ってから、より完成度の高い作品を目指し続けています。
TALK.03
これからのものづくりについて
若い世代を中心として実体を伴わないデジタル化が進んでいますが、物を作る素晴らしさや苦労、完成した際の達成感や喜びも体験してほしいですね。お金では買えない価値というものを、模型を通して伝えていきたいと思っています。物を作る、趣味を持つ、何かに挑戦する事の大切さを知ってください。