
木の声が聞こえますか?
きょうも森を歩いていると、木のおしゃべりが聞こえてきます。
「あたしたちがCO2を吸収する、というので、植林さえすれば、これまでどおりCO2を出してもいいと思っている人間が多いのには困ったものだわ」
「そうさ、たしかにわしらはCO2を取り込んで葉っぱや幹をつくっているけど、わしらだっていつかは死ぬんじゃ」
「葉っぱだって、毎年、落ちて枯れ葉になって、分解されればCO2を出すよね」
「わしの太い幹だって、倒れれば、いつかは腐ってCO2を出すんじゃ」
「一部は土になって、しばらくは、CO2を大地にとどめておけるけどね」
「わしらがどんなにがんばっても、CO2を取り除くことなんかできやしない。わしらができるのは、取り込んだCO2を、そうやってしばらく蓄えておくことだけさ」
「自分たちで出すCO2を減らす努力もしないで、木におしつけられても困るわ」
木の声が聞こえますか? わたしたちに出来ることをやらないと、木に怒られそうです。

フード・マイレージでポコポコ減らす
食材を生産地から運んでくるだけで、どれだけのCO2が出てしまうか。それを計算してみようというのが、フード・マイレージという考え方です。CO2を100g出すと1ポコ、という単位を使います。例えば、国産のアスパラガスなら0.01ポコ、アメリカ産のアスパラガスだと、3.41ポコというように計算できます。なんと、国産にするだけで3.4ポコも節約できるのです! CO2を1日1kg減らしたければ、1日、10ポコ減らすだけでいいのですから、国産のアスパラガスを3本食べるだけで達成できてしまうかも。北海道産のアスパラなら、もっとマイレージを減らせるでしょう。
ただ、気を付けなければいけないのは、フード・マイレージは運搬のときに出るCO2しか計算されないことです。たとえ国産でも、真冬に温室でボイラーをじゃんじゃんたきながら栽培したイチゴやトマトだと、マイレージは小さくても、生産過程で出たCO2はかえって多くなっているかもしれません。野菜も果物も、本来とれる季節のもの、旬のものだけ食べる方がおいしいし、CO2も出さずに済むのです。

本州の家が寒すぎる?
冬に北海道から本州に行って、ふつうの家に泊まるのはつらいものです。本州の家は、夏の暑さと湿気だけを考えて開放的につくられ、断熱などまったく考えていないからです。僕も東京生まれですが、冬の暖房はコタツだけでした。やがて小さいストーブなどを置くようになり、それがファンヒーターに代わりましたが、すき間だらけの家ではヒーターを切ればすぐに冷えてしまいます。関東でも寒い筑波にいたときの住まいはコンクリートのアパートの1階の部屋でしたが、さて、夜、一番暖かな場所はどこだったでしょう?
正解は、「冷蔵庫の中」。そう、北側の窓は内側から凍っていたのです。プラス5度に保たれた冷蔵庫の中が一番暖かでした。北海道のCO2排出量が本州の1.3倍もあるのは、私たちが暖房し過ぎているせいだけでなく、本州の家が寒過ぎるからではないでしょうか。でも北欧では、なんと暖房ゼロの集合住宅ができているそうです。壁を厚くして断熱を徹底し、昼間の太陽で温めておくと、北欧ですら暖房ゼロで暮らせるというのですから、まだまだ北海道の家も工夫が必要ですね。

「想定外」をどう防ぐ?
CO2でこれほどの温暖化が起きてしまった、というのも「想定外」のことでしたが、怖いのは、これから起きる「想定外」の自然現象です。去年、天塩川に行ったとき、途中から一部がすごい濁り水になっていたのに驚きました。上流へたどってみると、前日わずか数時間にこれまでになかったような激しい雨が降り、それが畑の土を押し流したことが分かりました。これまでなら多少の大雨でも平気だったのに、もうそうはいかなくなっているのです。洪水も起きやすくなっています。だからダムを作れ、とよくいわれますが、ダムで防げるのは、一部の雨にしかすぎません。2003年の「想定外」の大雨では、二風谷ダムに「想定外」の大量の水と土砂と流木が流れ込みました。もしあのまま雨が続いていたら、ダムは決壊する危険にさらされていたのです。事実、住民には避難命令が出されました。ダムは建設だけでも莫大なCO2を出します。「想定外」の大雨には、ダムはかえって危険をもたらすのです。自然を壊さず、あふれた水は川のまわりの低地にためる工夫をするほうが、
人間にも魚にも地球にもいいことなのです。

エコ節分・鬼は外
もうすぐ節分。エコ節分では、暖房を1℃下げ、1枚重ね着して「服は内」。これが「うちエコ」。では、ここでクエスチョン。「鬼は外」の鬼ってなんでしょう?
G8サミットを控え、EU諸国の自然エネルギーへの熱意には圧倒されます。前回のサミット議長国ドイツは、なんと2030年までに、45%の電力を風力やソーラーでまかなうと宣言しました。遅れていたイギリスでさえ、今は1.5%しかない自然エネルギーを10倍の15%にまで増やすと宣言したのです。次回議長国の日本はどうでしょう?なんと、これから1.5%くらいまで増やします、というのが日本の目標なのです。えっ、一桁まちがっているんじゃないの、と世界からはあきれられています。世界一の地震国でありながら、危険な原発を促進する日本。原発が事故で止まれば、また定期的な点検で運転できない時は、いちばんCO2を出す石炭でその電気を補っている日本。だから原発と石炭火力発電所の建設は同時に進む、というのをご存じでしたか?「うちエコ」も大事ですが、それだけでは日本のCO2は減らせません。
鬼は外にいるのです。

カーロの学校
ドイツの田舎にゴミ箱のない小学校がある、と聞いて訪ねていきました。まさか、と思っていたのですが、本当に小さなバケツが一つあるだけ。「紙は?」と聞いたら、「表も裏も使って、あとは古紙として再利用するので、立派な資源です。」と言われてしまいました。それでも紙を減らそうと、1年生は箱のふたに砂を入れ、それでA、B、Cとアルファベットを書く練習をしていました。これなら何回でも使えますね。
教室には、森の土を入れた大きな水槽がありました。土の中にはミミズがいます。最初はミミズと聞いて気持ち悪い、という女の子もいたので、みんなでカーロくんという名前をつけました。日本なら太郎くんといったところです。小学校は給食ではなくお弁当。リンゴの芯やバナナの皮を水槽の中に捨てると、無くなっていきます。あ、これはカーロくんが好きなんだ。でも、ラップやアルミホイルはいつまでも無くなりません。あ、これはカーロくんには食べられないんだ。カーロくんが食べられないものは使わないようにしょう!子どもたちはこうやってゴミを減らすことを学んでいるのです。

ドングリの森のメッセージ
夏にドングリの森に行きました。太陽を浴びて、たくさんの葉っぱが、懸命に光合成をしていました。木だって息をしますが、そのとき出す量より多くのCO2を吸収して、幹を太らせたり、枝を伸ばしたり、ドングリを大きくしたりするのです。
秋にドングリの森に行きました。ドングリがポトリと落ちていきます。黄色くなった葉っぱは、風が吹くと散っていきます。年を取って、倒れてしまった木もありました。落ち葉や倒木は腐って土になり、中のCO2は、姿を変えて土に蓄えられます。でも、その途中で空気になって出ていくCO2もあります。ドングリを食べたのはリスくんでした。ドングリになったCO2はリスくんのウンチになって土に戻り、いつかリスくんが死ぬと、リスくんの体にあったCO2も空気に戻っていきます。木は、人間のように余分なCO2を出すことはありません。吸収した分だけ、いろんな形で長く蓄えてくれて、いつかは全部空気に戻すのです。これを「カーボン・ニュートラル」といいます。
わたしたちも、木を見習っていきたいですね。

生きものたちのウォームビズ
厳しい冬を、ムダなエネルギーをできるだけ使わないようにして、少しでも暖かく過ごそう、と考えているのは生きものたちも同じです。ヒグマのように地下や大木の下の穴で冬眠する動物もいます。ウサギもキツネも、冬は夏より暖かい毛皮に着替えていますね。森のねずみさんの家は、冬は雪の下。雪で倒れてしまったササの下の空洞が住みかです。
雪は冷たい、と思うかもしれませんが、ふわふわした雪は上等のふとんのようなもので、天然の断熱材です。たとえ地上がマイナス30℃でも、厚い雪の下にもぐれば、そこは0℃以下にはなりません。ササだって、もともとは南方の植物。冬でもあざやかな緑の葉をつけたエゾユズリハも、すっぽりと雪に埋もれて、枯れることなく冬を生きているのです。
アイヌの人たちも、昔は竪穴住居に住んでいました。地面を掘り下げると、そこには地熱があります。低い屋根を厚く雪がおおい、床で火を燃やせば、現代的な建物より断熱のいい、すばらしい省エネ住宅だったのです。私たちも1枚よぶんにセーターを着て、冬を楽しく過ごしましょう!

北海道 洞爺湖サミットに向けて
来年7月、洞爺湖で開かれるG8サミット。その第1のテーマはCO2の削減です。議長国である日本は、まずお手本を示して会議をリードしなければなりません。でも「北海道は1人当たりのCO2排出量が全国ワースト1」と聞いたら、ちょっとがっかりですね。どうすればいいでしょうか? 会議場やプレスセンターのエネルギーをソーラー発電でまかなう、という案も出されています。北海道は風力発電では全国一。これを機会に自然エネルギーをもっと使うようにしましょう。家々に灯油タンクが並ぶ風景を早くなくしたいものです。あとに危険なものを何も残さない自然エネルギーが、北海道にはいちばん適しているのではないでしょうか。 でも、「もっとも効果的な発電は省エネだ」といわれます。陽がさしこんで明るいのに蛍光灯がついていませんか? 誰もいない部屋に電気がついていませんか? 家でも学校でも職場でも、まだまだCO2を減らせるはずです。自販機は確かに便利ですね。でもそれを減らしただけでどれだけCO2が減らせるか、イマジンしてみましょう。