北海道らしいテーマで身近な環境保護に努める活動を表彰する「北海道新聞エコ大賞」。
北海道を拠点に活動する「企業・団体の部」に27件、「家族・サークルの部」に21件の応募があり、大賞各1件、奨励賞計5件の受賞者が決まりました。
ユニークで着実な取り組みを続ける各受賞者と、その活動内容をご紹介します。
<2012年度北海道新聞エコ大賞 審査委員会>
●審査委員 / | 大原昌宏氏(北海道大学総合博物館教授) 菅井貴子氏(フリーキャスター・気象予報士) ビアンカ・フュルスト氏(環境カウンセラー・札幌市環境保全アドバイザー) 三好則男(北海道新聞社取締役経営企画局長) |
東京電力の福島第1原発事故後、幼い子供のいる母親らから要望を受け、2012年5月、札幌市豊平区のカフェ内に放射能測定所を開設しました。
市民の寄付と知人からの借り入れで、194万円の外国製の測定器を購入。1検体3千円で測定しています。2013年3月26日現在、飲食店や農家、市民の依頼など食品を中心に197検体を測定してきました。
多いのが本州の親戚から送られてきたコメ。検出限界値以下の福島県産がある一方、微量の放射能を検出する北関東産もあり、どの地域なら安心と言い切れませんでした。代表の富塚とも子さんは、「検出の有無にかかわらず、測定自体に感謝される」と安心を提供するやりがいを語ります。
会員は227人いますが、測定に関わるスタッフは15人。返済していない借入金も50万円あります。
富塚代表は「長期間続く放射能汚染の影響を考えると、活動も長期間続けることが重要。受賞は励みになる」と喜んでいます。
北海道新エネルギー事業組合(根室管内中標津町)
「中標津における酪農・農業へのヒートポンプ活用の取り組み」
搾乳した牛乳から熱を回収するミルクヒートポンプシステムを研究、開発しています。
牛乳を冷やす大量の水が不要になるほか、搾乳機器の洗浄に必要な温水をつくる灯油を削減。
乳牛100頭規模の酪農家で二酸化炭素排出量が60%減少すると試算しています。
また、レタスを栽培するビニールハウスにも、空気中の熱を圧縮して熱を取り出すヒートポンプシステムを導入し、ボイラーによる灯油使用量の削減に取り組んでいます。
「木育」でつなげる北海道木造住宅の会(石狩市)
「『木育』でつなげる北海道木造住宅」
道産材を扱う道内の住宅建築業者や家具生産者、製材業者など28社が2012年4月に設立。
輸入木材と比べて輸送距離が短く、二酸化炭素排出量を削減できる道産材の利用促進に取り組んでいます。
道産材の利用は適切な営林の促進や間伐材の有効活用のほか、地域社会の発展にもつながることから、同会では家具作り教室や子供向けの木工教室など木と触れ合うイベントも開催し、木材の良さを伝える活動を行っています。
藤学園藤女子中学校・高校(札幌市北区)
「エコ・クッキングにライフスタイル変容のてがかりを求めて」
中学3年生らに料理を通じて環境問題を身近に感じさせる技術・家庭の授業を2005年から行っています。
調理実習の際、一人分を作るのに必要なガスや水、電気、排出される生ごみの量をメーターで詳細に計測。また、使用する食材の産地や輸送、栽培に必要な資源について考えることで、環境への意識を高めました。
授業が終わった後もそれぞれの家庭で独自に省エネや生ごみの堆肥化などに取り組む生徒も現れています。
釧路湿原の自然再生を目指し、さまざまな野生生物の生態を観察。特に食害や在来種への影響が深刻化する特定外来生物のウチダザリガニやセイヨウオオマルハナバチを調査し、駆除する活動に力を入れています。
1996年の発足以来、高校生以下で構成され、現在のメンバーは釧路管内の小学生5人、中学生5人の計10人。環境省釧路湿原自然保護官事務所などの協力で、毎年5~10月に釧路湿原の温根内川支流などでウチダザリガニを駆除します。
1匹ずつ性別や体長などを記録し、気温が高いと捕獲数が増えるといった分析も。また壁新聞に活動結果をまとめ、特定外来生物の危険性を啓発します。
湿原保護のボランティア活動を続け、同クラブを指導する釧路市の近藤一燈美(ひとみ)さんによると「環境意識が高まり、獣医師になったOBもいる」とのこと。また代表の道教大付属釧路中1年の長谷川君は、「駆除を通じて環境保全に貢献していると実感します。」と話しています。
何でもボランティアほわっと(宗谷管内枝幸町)
「ほわっとサロン」
枝幸町歌登地区の町民ボランティアら約60人のグループが、空になった牛乳パックや古布を使って椅子作りに取り組んでいます。地域の高齢者や障害者らが週に1度集まるサロンで活動の一つとして、一昨年から実施。会話と手作業を楽しみながら、環境に役立つことができると評判で、椅子は希望者に格安で販売するほか、材料を提供してくれた人に無償提供します。代表の田中浩子さんは「活動を細く長く続け、定着させたい」と抱負を語っています。
渡辺晋一さん(札幌市豊平区)
「チラシで作るかご」
新聞に折り込まれるチラシをペーパークラフトの材料として再利用し、毎年数百個のかごを10年前から札幌市内の自宅で製作しています。円柱状に丸めたチラシを細長くつなげ、竹細工のように編みます。20分から3時間ほどでかごの形が出来上がり、色を塗って完成。
かごは地域の公民館で毎年開かれる文化祭に出品し、知人らに配布。また、作り方を子供達に教えます。71歳の渡辺さんは「冬の屋内でも気軽にできるエコ活動」と楽しそうに語っています。