坂下:甜菜は一般にはなじみが薄いと思われますが、どのような作物ですか?
加藤:甜菜はビートとも呼ばれ、砂糖の原料となる作物です。明治以来北海道農業の基幹作物で、国産砂糖の約7割を占めます。国内では北海道だけで生産され、一般には流通されていません。
坂下:料理で使うテーブルビートは知っていましたが、甜菜は見たことがありませんでした。
加藤:甜菜は安価な輸入原料に押され、手間もかかることから、作付面積や生産量が年々減少傾向にあります。しかし、輪作体系の維持の上でも無くてはならない、重要な作物なのです。
坂下:ビートチップスは倉本聰さんの発案とお聞きしました。
加藤:5年ほど前に「甜菜をお菓子にできないか」と相談されたんです。倉本聰さんは休耕地が増える現状と北海道農業の行く末を危惧されており、そのお話を受けてすぐに商品化への挑戦を始めました。そして出来上がったのがこのビートチップスなのです。
坂下:甜菜をお菓子にするのに、苦労された点はありましたか?
加藤:永年、砂糖原料としてのみ生産されていた作物ですから、お菓子用に入手することが何よりも大変でした。
関連業界の方々も初めてのことでしたが、粘り強く交渉を重ねていき、北海道の行政機関や研究機関等がご尽力くださり、種を提供してくれたりもしました。
そして、生産では農家さんが、試作研究では江別の食品加工研究センターさんがご協力くださり、多くの方々のお力添えがあってこそ、弊社はまず一歩進むことができたのです。
北海道農業への思いは、皆さん一緒なんだと感じました。
坂下:初めてビートチップスをいただきました。砂糖の原料ということでかなり甘い味を想像していましたが、とても軽くスッキリとした自然の甘味を感じます。
加藤:味付けは一切していません。甜菜をそのまま味わっていただきたくて。
坂下:そうなんですね。思わず原材料表示を見てしまいました。一緒にフルーツを添えたり他の栄養素を補えば、朝食向けのシリアルにもできるのではないかと思います。
加藤:甜菜には、北海道のどのような食の可能性を感じますか?