地域の元気を育む

海外も地域も元気にするチカラ

元青年海外協力隊員、西脇さんにお話を伺いました

セネガルで得たコミュニケーション力

海外に興味を持ったのは、小学生のころ、テレビでアフリカの飢餓を映した映像を見たのがきっかけ。 高校時代に青年海外協力隊のことを本で知り、そのころから海外で社会に貢献できる人間になりたいと思っていました。
大学卒業後、企業に就職しましたが、海外で国際協力をしたいという思いは持ち続けていました。 2007年、JICAの試験を受け、派遣地のアフリカ・セネガルへ。現地では村落開発普及員として、 砂漠化している土地への植林活動を行いました。
私が携わったのは、村へ行って住民の要望を聞き、問題点を解決するなんでも屋的な仕事。 どういう木を植えたいのか、どんな生活をしているのか、 村の人とのコミュニケーションに多くの時間を費やしました。
セネガルでの 一 番の思い出は、ホームステイしていたご家族や多くの友達と巡り会ったこと。 掛け替えのない宝物だと思っています。

同業者との絆が地域の力へ

私が農業を志したのは、セネガルに滞在中のこと。 現地で知り合った働き者の方が、暑い中、黙々と農作業をしている姿を見て、 「こんなに痩せた土地でも頑張っている人がいる。 私も先祖が育てた実家の農地を無駄にしてはいけない」と思うように。 当初は継ぐつもりもなかった農業を、初めて意識したのです。
帰国後、江別の実家に戻り、父について学びながら農業を始めました。 文系からまったく畑違いの世界に転身して3年、まだまだ勉強しなければいけないことばかりです。

農繁期は朝早くから農作業に明け暮れますが、農協の青年部や農業普及所の集まりには積極的に参加。 ネットラジオで農業を語り合うトーク番組「バカ農業」の配信や、子どもたちへの食育イベント、 地域の人との触れ合い祭りなどの活動も行っています。
これからは、女性農業後継者のためのネットワークをつくろうと思っています。 農業は、まだまだ男社会。女性農業家に適した情報発信が必要なのです。 地域を元気にしようと思ったら、自分 一 人が元気になってもしようがない。 よい情報はみんなと共有することで、地域の力になっていく。 コミュニケーションから生まれる力こそ、青年海外協力隊で学んだことかもしれません。

西脇 佳代さん 農業仲間 岡村 若桜さん

元青年海外協力隊員、渡辺さんにお話を伺いました

ネパールで見たコミュニティーの力

1990年代半ば、私は医療生活協同組合で地域住民の健康増進を図る仕事をしていましたが、 海外の仕事にも関心がありました。そのような時、私の背中を押したのは夫。 農業協力のNPOで海外赴任の経験がある夫の勧めでJICAの試験を受け、合格して海外へ赴くことになったのです。
数カ月の研修を経て、派遣された国はネパール。 インフラが備わっていない村に、水道やトイレを整備し、衛生指導をする仕事に携わりました。 困っていないのに、なぜトイレが必要なのか? 住民たちの理解を得るには、目的をしっかりさせることが必要でした。
現地では、トイレが整備されている村と、行き届いていない村がありました。その差は、地域を愛する意識の違い。 モチベーションがあるコミュニティーでは、トイレはきれいに使われていたのです。 この2年間で得たものは、たくさんの仲間。いまでも家族のような付き合いが続いています。

地域の皆さんでつくった「黄金湯」

帰国後は、保健師、NPO職員などの職を渡り歩きました。
そのころ、障がい者の社会参加を考える講演会で中頓別町を訪問。閉鎖されていた銭湯と巡り会いました。 2010年に内閣府による起業支援のコンペがあり、その銭湯の再生プロジェクトを企画して応募。 プランが受け入れられ、中頓別に移住して銭湯を開業することになりました。

開業準備期間から町内のたくさんの皆さんのご協力を得て、11年「黄金湯」が再開しました。
昨年秋から、お風呂の燃料はまきを使っていますが、 それは十数人のボランティアさんの力で切り出されたもの。
自分たちで汗を流したものが、地域の宝となっていく。 主体的に力を発揮する皆さんを前に、私も半端なことはできません。これはネパールの経験から学んだことです。
私が思い描いているのは、生き生きとしたコミュニティーを核にした健康なまちづくり。 そのためには、多くの人が参加し、続けていける仕事にしていきたいと思います。 「黄金湯」の未来は始まったばかり。 まだよちよち歩きですけど、この先、しっかり歩けるようにしていきたいですね。

渡辺 由起子さん ボランティア仲間 工藤 芳広さん
  • EDIT:北海道新聞社広告局/nu
  • TEXT:高崎 克秋
  • PHOTO:ハギノ タカユキ
  • 記事公開日:2013年3月16日 朝刊 掲載

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