山で育まれる、人と自然を愛する心

山と親しむ、山を楽しむ。

誰でも安心して山登りを
楽しむために大切なこと

最近の傾向では、トレッキングを楽しむ人が年代を問わず増えています。特に20代後半〜30代の若い層の増加が顕著です。数年前の山ガールから始まり、ブームが落ち着いても、はやりで始めた人が山登りを継続して、さらに、山ガール第1世代の人が新しい人を誘って…それで、またトレッキング人口が増えたというわけです。ファッションから入ったけど、山に魅せられて続けている人が多いですね。
ビギナーの方に注意してほしいことは、まずはペース配分です。初めての方はサクサク歩いて汗だくになりがちですが、基本は汗をかかない歩き方。ジワッと汗ばむくらいのスピードを維持してほしいと思います。
携帯する水分の目安は、半日の登山で2㍑程度。全部飲みきらず、下山して200〜300㍉㍑残っているくらいがいいですね。水分は時間を区切らず、立ち止まったら一口飲むというように、常に口を湿らせるイメージで補給してください。水分だけでは疲労しますので、糖分と塩分を時々補給すること。あめやチョコレート、サプリメントなどを食べると効果的です。
装備には“登山の三種の神器”があり、登山靴とリュックサックとレインウェア、これらは最低限必要です。登山靴は、防水性でしっかり足を守る靴を。リュックサックは、その日の行動に応じた大きさを。山は天候が変わりやすいので、晴れていてもレインウェアは絶対に持って行ってください。あとは、アルミシートや日帰りでもヘッドライト、救急セットなど、緊急時に備えたグッズもあるといいですね。足腰に自信のない方はストックもおすすめです。北海道に限れば、クマ対策も必須。特に一人のときは、鈴や笛など音が出るものを持って歩くようにしましょう。

トレッキングの魅力は
自然と一体になれること

photo0北海道の山の特徴は、本州と比べると標高が低くても気象が厳しいこと。本州の山に、プラス1000mの環境と考えていただきたいです。例えば、北海道の2000mの山は本州の3000m程度の山(北アルプスレベル)に登る感覚。標高の高い山に登る場合は、万全の防寒対策が必要です。
その反面、北海道では低山でも高い山の自然を楽しむことができます。本州では2000m以上の山で咲く高山植物が、北海道では1000m程度の山で見ることができる。北海道には固有種が多く、低い山でも珍しい植物が見られます。手付かずの森が多く残る自然環境も、北海道の山ならではの魅力です。
僕にとってトレッキングの魅力は、動物的な感覚を味わえる場所であるということ。自然に溶け込み、歩いて、疲れて、食べて、自分がどんどんシンプルになっていく。余計な考え事もせず、途中で見る花や川をきれいだなと素直に楽しむ感覚を味わえます。
登山を始めたのは7年ほど前。山好きの仲間に連れていってもらったのが始まりでしたが、だんだん楽しい気持ちになり、気付いたら次はどこへ行こうかと考えるようになっていました。次はあの山を登ろう、次はあの辺りを歩こうと、どんどん行きたいところが湧いてきて。いまでは、休日はほとんどどこかの山を登っています。
夏の山には生命力があふれ、冬の山には音のない静寂感が満ちる。冬の山の何とも言えない澄んだ感じが好きですね。

自分のペースで登れることが
シニアにも人気の理由

特に、シニアの方でも自分のペースで、いつでも休憩を挟みながら山頂を目指せるところが人気の理由です。
また、一緒に登る人との連帯感が生まれ、親子で行けばコミュニケーションが生まれる。花や虫を見つけて、「これは何?あれは何?」と、子どもたちの方がたぶん発見が多いと思います。
これから始めようかなと思っている方は、まずは行動してみてほしいです。公園でもいいし、キャンプ場でもいいし、もちろん山でもいいし、とりあえず自然の中に入ってみることです。計画を綿密に立てる必要はありません。山頂へ行かなくてもいいので、とにかく自分の行けるとこまで行ってみる。その体験を味わったら、きっと「次はどの山へ」と行きたくなるのではないでしょうか。

井倉 崇雄

井倉 崇雄さん

1984年、名古屋生まれ。日本体育大学体育学部卒業。大学ではスキー部に所属し、スキー準指導員の資格を取得。大学卒業後、モンベルに入社。2011年、札幌発寒店店長。入社後、山岳スキーから夏山登山を始め、全国・道内の主要な山を踏破している。

企画取材協力/株式会社モンベル

映画「春を背負って」~あらすじ~

春を背負って 立山連峰の大自然を背景に、人間の優しさと心の成長を描いた作品

photo2 photo3 立山連峰で山小屋“菫(すみれ)小屋”を営む厳格な父・勇夫(小林 薫)に育てられた長嶺亨(松山ケンイチ)は、父から遠ざかるように東京に出て、金融の世界で会社の歯車として働いていた。
そんなある日、勇夫の訃報が届く。通夜に帰郷した亨を出迎える母・菫(檀 ふみ)、そして勇夫と菫小屋で働いていた高澤愛(蒼井 優)。葬儀を終えた亨と菫は、愛を連れてあるじを亡くした菫小屋を訪れる。あらためて父の山小屋に対する思いに触れ、都会での仕事にむなしさを感じていた亨は、菫小屋を継ぐことを宣言。菫は素人にはできないと反対したが、亨の決意は固く、菫小屋は父から子へ受け継がれることになった。
愛と共に菫小屋の経営を始めた亨は、慣れない仕事に悪戦苦闘の日々。そんな時、勇夫の友人と名乗る“ゴロさん”こと多田悟郎(豊川悦司)が菫小屋に現れる。世界を放浪し不思議な魅力を持つゴロさんの自然に対する姿勢や愛の天真爛漫な笑顔に接しながら、亨は新しい自分の人生に向き合い始める。

6月14日(土)東宝系公開 photo4

映画「春を背負って」 ~解説~

日本を代表する名カメラマンで、2009年の「劔岳 点の記」で初メガホンを取った木村大作氏が再び監督に挑んだ長編作品。笹本稜平氏の同名小説を原作に、立山連峰を舞台に、山小屋を営む家族とそこに集う人々の人生を描き出す。立山連峰で60日間の山岳ロケを敢行。スタッフとキャストが自分たちで山へ登り、その場で湧き上がった感情を捉える、本物の場所と芝居にこだわった木村監督の演出がリアルな映像を生み出した。

  • EDIT:北海道新聞社広告局/nu
  • TEXT:高崎 克秋
  • PHOTO:川村 勲
  • 記事公開日:2014年6月13日 朝刊 掲載

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