─1914~1941年の間、カナダ・バンクーバーに実在した「バンクーバー朝日」という日系カナダ移民の2世を中心とした野球チームが西海岸の白人リーグを制しチャンピオンになったこと、半世紀以上たった2003年、カナダ野球殿堂入りを果たしたことをご存じでしたか?
大野今回の映画を見て初めて知りました。バンクーバー朝日は、キャプテンやメンバーの未熟な面をお互いにカバーし、いろんなことを言い合いながら、一丸となって戦い続けた素晴らしいチーム。自分たちの力のなさを認めながら、相手の力を認めて立ち向かう勇気に感銘を受けました。リーダーとして、チームに何ができるのか?チームを助けることができるのか?チームを引っ張っていくいろんな方法を感じることができました。
─バンクーバー朝日は、過酷な環境の中で、つらい労働の合間に野球をしていましたが、そのような逆境をご自身でも経験されていると思いますが。
大野あれほどの逆境を経験したことはありませんが、過酷な状況の中でも諦めずにやり続ける姿を見て、人間は逆境に立たされたときこそ本当に強くなれる、考える力が芽生えてくると感じました。僕の考え方は、良いときも悪いときも50対50。どんなに苦しいことがあっても、その後に必ず良いことがある。家族のために、チームメイトのために、自分より誰かのためにがんばるという気持ちで乗り越えています。
─仲間や家族、ファンなど周囲の応援を力に変え、バンクーバー朝日は優勝争いをするチームに成長しますが、仲間やファンの存在は大きいですか?
大野野球をやってきて一番の喜びは、仲間との縁が切れないこと。同じ釜の飯を食べて、つらい練習をしてきた選手とはずっと親交が続いています。ファンの声援はとても心強いですし、多くの方から応援していただけることは、誰にでも体験できることではないことだと思っています。カナダ中から「試合を見たい」と声が掛かったバンクーバー朝日も光栄に感じていたのではと思います。いま僕らがこうしてファイターズとして野球ができるのは、北海道のファンの皆さんのおかげ。相手チームからも応援されるバンクーバー朝日のようなチームや、稲葉さん、金子さんのような選手が増えていくことが大切だと思っています。多くの人が感動して、面白いと感じて、球場に足を運んでもらえることが一番です。この映画のように、皆さんがワクワクするような野球ができるようにがんばりたいと思います。
僕は「バンクーバーの朝日」を見て、仲間の大切さと、どんな状況や相手でも諦めずに戦う勇気を学びました。仲間たちと語り合い、助け合い、切磋琢磨(せっさたくま)する、バンクーバー朝日。そのチームワークは、僕らや多くの方にとってもお手本になると思います。
19世紀末から戦前にかけて、貧しい日本を飛び出し、一獲千金を夢見てアメリカ大陸へと渡った日本人たち。そこで待ち受けていたのは、過酷な肉体労働と人種差別でした。日本人街で肩を寄せ合うように暮らした日本人たち。そこに、一つの野球チーム「朝日」が生まれました。体が小さく非力な彼らは、当初は白人チームのパワープレーにまったく歯が立ちません。しかし、バント、盗塁、ヒットエンドラン、スクイズ、俊敏な捕球といった小柄な日本人の特性を生かした戦術を徹底して磨くことにより、「朝日」は徐々に白人チームを負かし始めます。“アリが巨象を倒す”痛快さと、どんなラフプレーにも抗議をしないひたむきな姿に、やがて日本人ばかりか白人たちまでもが熱狂の渦に。そして、彼らはついに西海岸の白人リーグを制し、チャンピオンの座に登り詰めます。しかし、「朝日」の前には、さらに過酷な境遇が待ち受けていたのでした。