人と企業を育み、根釧地域の活力に。

「地域」という土壌に生かされているという思い。地元企業と地域資源を育て、未来へとつなぐ。

地域資源の「価値」を創る

先人の足跡に学び、地元企業の長所を知る

遠藤 修一

―大地みらい信用金庫は2016(平成28)年、創立100周年を迎えます。地域の金融機関としての歴史を振り返ってのご感想をお聞かせください。

遠藤:お客さまへの感謝が一番です。そして、歴代経営陣の教えに学ぶところが多々あります。当金庫本店5階の資料室には、根室大空襲直後のことが克明に綴られているノートがあります。それらを読むと、建物や重要書類の大部分を焼失したことなど、大変な苦労があったことがうかがえます。その足跡と不屈の魂は現経営陣だけでなく、若い職員にも受け継いでいかなければと思います。厳しいからといって下を向くのではなく、必ずそこには何らかのチャンスがあります。私どもは地元企業のそれぞれのいい所をきちんと評価して、ポジティブ発想でお手伝いをしていかなければなりません。

―地域資源の価値創造の具体的な取り組みをお聞かせください。

遠藤:地域が疲弊して苦境である時、当金庫だけが健全性を保ち続けることはありえません。我々は、地域という土壌で生かされ、存在しています。どのようにしたら地元企業の経営体質を強化できるか、当事者感覚を持ちながらお手伝いをしていきたいと考えています。私ども信用金庫の役割とは何か? 根釧地域の足元を見れば、豊富な資源があります。内向きの目線で見ると、自分たちの強さも弱さも分からない場合があります。しかし時として、根釧地域の外の人たちのほうが、地域の魅力を知っているという場合があります。
 昨年6月に開催した、香港の高級スーパー「シティ・スーパー」との商談会(道東6信用金庫共催)をきっかけに、当金庫のお客さまの水産業数社が取引を始めました。地域が厳しい状況の中で切磋琢磨・競争する部分と、連携する部分を上手に組み合わせれば、将来、大きな力になるでしょう。つながる力こそが根釧地域全体の価値を高めていくことにもなります。当金庫もその当事者であり、積極的に企業の経済的価値向上のお手伝いをしたいと考えています。

組織で人を育てる、地域でつながりを育てる

―「企業は人なり」と言われます。人材育成について、どのようにお考えでしょうか。

遠藤:人財育成に力点を置かなければ、100周年以降の未来にはつながらないと思います。信用金庫とお客さまのお付き合いは、短期ではなく、長期目線でとらえなければなりません。
当金庫では中小企業診断士や社会保険労務士をはじめ、農業経営アドバイザー、ファイナンシャルプランニング技能士など、お客さまの専門的なニーズにお応えできるよう職員のスキルアップを図っています。もちろん、知識・技能以前に、地域の発展のために貢献しようという当金庫らしいマインドを持っていなければいい仕事はできません。根底にあるマインドを共有し、高いところをめざしてチャレンジし続けることが重要です。没頭する時間が人を育てると思います。信用金庫で学び、地域で学ぶ。このことは、職員が人間的に成長する鍵になると考えます。

―11月26日、釧路東支店を新築移転し、店舗内に地域交流の場を設けているとお聞きしました。

遠藤:信用金庫は地域の皆さまのものであり、「公の器」。仕事をしている側だけの論理でつくるのではなく、ご利用いただく皆さまの側の論理を大事にしたいのです。本店、中標津支店などと同様、今回も設計前に地域住民の皆さまのご意見をお聞きし、店舗づくりの参考にさせていただきました。コミュニティスペースを設けていますので、文化サークルなど、地域の皆さまで活用いただき、そこからまた新しい輪が生まれ、人と人とが育つ場になってほしいですね。人のご縁の輪の中心に当金庫があってくれれば、大変幸せなことであり、まさに地域に根差す信用金庫冥利に尽きます。ありがたいことに、新しい釧路東支店の隣には釧路町商工会があり、経済連携がしやすくなりました。釧路町の魅力がより 一 層輝きを放ち続けるための場として役立てたいですね。

根釧地域の未来のため「まちづくり」を支える

地元企業とバイヤーの商談会

―根釧地域の金融機関として、未来へのメッセージをお願いします。

遠藤:こだわりある地域の魅力をしっかり発信していくこと、官依存でなく、地域経済をしっかり考え、本当の意味での自立を図ること。それがビジネスチャンスにもつながります。孤独な闘いは辛いですが、強い気持ちを持って立ち向かえば、自然と地域の中でチームワークができ、人財も育ちます。まさに力の結集が地域の活性化を生みます。地元企業の皆さまが力をつければ、人口減少対策にもつながるでしょう。大地みらい信用金庫は、これからも地域の皆さまと共に「まちづくり」に関わりたいと考えています。

北大との連携協力で未来の芽を育てる

地元企業とバイヤーの商談会

出前教室では北大工学研究院の
山本靖典助教が鈴木カップリングを解説

2011年10月、大地みらい信用金庫は北海道大学産学連携本部と連携協力の覚書を締結しました。人財育成に関する事業や、地元企業から北大への技術相談の橋渡しを行うといった、大学が持つ研究シーズと地域ニーズのマッチング事業をすでに17件行うなど、相互機能を発揮した取り組みを進めています。
また、今年2月には根室市内の中学2校で北海道大学特別出前教室「ノーベル賞はこうして生まれた~鈴木カップリング研究」を開催しました。今後、釧路地区においても同様の取り組みを展開する予定です。

遠藤 修一大地みらい信用金庫 理事長
1956年、中標津町生まれ。釧路湖陵高、小樽商大卒業後、78年に旧根室信用金庫入庫。
経営企画部長、専務理事などを経て、10年6月から現職

大地みらい信用金庫

本店 〒087-8650 根室市梅ケ枝町3丁目15番地 TEL (0153)24-4101
設立年月日: 1916(大正5)年5月10日/店舗数: 根室・釧路地区に21店舗/
役職員数: 226名 ※店舗数・役職員数は2012年3月31日現在

  • EDIT:北海道新聞釧路支社営業部/nu
  • TEXT:黒田裕子(株式会社スタッフ)
  • PHOTO:株式会社アート・パラディムほか
  • 記事公開日:2012年11月27日 朝刊(釧根版) 掲載

育未来計画 Webアーカイブ

  • 「育」未来計画とは?
  • お問い合わせ