特集 北海道エコ・アクション

もっと知りたい!新エネルギー 太陽や風など身近なものから新しいエネルギーをつくろう。化石燃料に頼らないエネルギーの未来が、北海道で始まっています。

ますます注目を集める「新エネルギー」

石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は、動植物の死骸が長い歳月にわたり地下に堆積して形成された地下資源です。その埋蔵量には限りがあり、世界の国々がこのままのペースで使い続けると、石油は約42年、天然ガスは約60年、石炭は約133年で枯渇するといわれています。 また、化石燃料が燃焼時に排出するCO2による地球温暖化への影響も切実です。そこで今注目を集めているのが、化石燃料に代わる“新エネルギー”です。
新エネルギーには大きく分けて、大陽や風など自然の力を利用する「自然エネルギー」、廃棄物の燃焼熱などをムダなく使う「リサイクルエネルギー」の2種類があります。特定の地域にしか存在しない化石燃料と違って、自然エネルギーは地球上の広い範囲で享受することができ、枯渇することなく再生が可能です。
また、新エネルギーは地域の資源や産業を活用できるので、まちづくりの一環としても役立ちます。環境に優しく枯渇のリスクを軽減できる新エネルギーが、まちのパワーアップにも一役買ってくれる─そんな未来も夢ではないかもしれません。

新エネルギーのいろいろ

北海道は新エネルギーの宝庫!

実は北海道は、1人当たりの家庭用エネルギー消費量が日本一。冬期間に暖房のエネルギーをたくさん使う分、CO2も多く排出しています。エネルギー消費量とCO2排出量をこれ以上増やさないために、省エネルギーはもちろん新エネルギーの活用が今後ますます重要になってきます。特に豊かな自然と気候風土に恵まれた北海道は、自然エネルギーをはじめとする新エネルギー創出の可能性は十分。すでにいくつかの市町村では、地域特性を生かした新エネルギーによるまちおこしへの取り組みが始まっています。

例えば苫前町では日本海沿岸特有の強風を風力発電に応用。3基の風車を設置した「夕陽ケ丘ウインドファーム・風来望」を整備し、夜間照明などの消費電力に使っているほか、余った電力は北海道電力に売電しています。さらに民間企業による大規模風力発電施設「苫前グリーンヒルウインドファーム」も誕生。クリーンエネルギーの先進地として全国の注目を集めています。

苫前グリーンヒルウインドファーム

▲苫前グリーンヒルウインドファーム

また、稚内市でも最北端の町特有の強風を風力発電に利用。例えば「稚内新エネルギー研究会」は、稚内公園の風車と連携した燃料電池システムの実証研究を行いました。稚内ではさらに風力だけでなく太陽光発電にも着手。大規模発電の実証研究施設として建設されたメガソーラー発電所を中心に「稚内次世代エネルギーパーク構想」の実現を目指しています。

稚内メガソーラー発電所

▲稚内メガソーラー発電所(写真撮影:株式会社明電舎)

北海道発の新エネルギーが、地球の未来を動かす力になる。そんな日も遠くはなさそうです。

最新リポート 新エネルギーの可能性を創造する 北海道工業大学「新体育館」プロジェクト

2年前に構想がスタートし、2月29日に竣工した北海道工業大学の新体育館「HIT ARENA」。太陽光や地中熱などの新エネルギー技術を導入した最新鋭の建築プロジェクトについて、新エネルギー分野を研究している建築学科の半澤久教授にお話を伺いました。

太陽光+地中熱で、環境に優しいキャンパスへ。

老朽化した体育館の新築にあたり、本学の建築学科から都市環境学科、機械システム工学科まで、学科の枠を超えて教授陣やOBなどが集結し、“環境に配慮した建築”をテーマに新エネルギーを導入した建築計画を実践しました。そのひとつが太陽光発電で、北海道の場合、冬期間の積雪や日射量不足がネックです。そこでソーラーパネルを南側の壁面に設置することで積雪のリスクや屋上の荷重負荷を回避するとともに、雪面の反射を利用して太陽光を多く取り込めるようにしました。このシステムにより廊下など共用部のLED照明の電力を賄なえる上、蓄電して夜間にも利用できます。
もうひとつは地中熱ヒートポンプシステムで、循環液を通したパイプを地下に入れて熱を吸収し、アリーナの床暖に利用しています。地中熱は年間を通じて平均約10℃で安定しているので高い効率の暖房ができ、北海道のような寒冷地に適しています。さらに、アースチューブによる換気システムを導入。地中に空気の通り道を作ることで、換気のための外気をあらかじめ少し暖めて、暖房効率を高めています。
「HIT ARENA」

半澤 久教授 北海道工業大学  空間創造学部 建築学科 住環境を快適にする設備システムの省エネルギー化と建築の環境性能の向上を研究。 ■気候を生かした新エネルギーを利用 壁面のソーラーパネルで太陽光を集めて照明用の発電に利用。地下の循環液パイプから吸収した地中熱を活用するヒートポンプシステムを、暖房に利用しています。

太陽光や地中熱、風力、雪氷など、北海道の気候風土を生かした新エネルギーは、既存のエネルギーと上手に組み合わせることでエネルギー源として大きな可能性を秘めています。本学も他大学や産学官などの連携を深めつつ、「HIT ARENA」を拠点とした実証研究の成果を北海道の未来に還元できればと願っています。

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