日本の国土の約7割を占める森。私たち人間に大いなる恵みをもたらしてくれるだけでなく、さまざまないきもののすみかでもあり、川や海につながる大切な存在でもあります。 「国際森林年」の今年、この掛け替えのない森や環境のこと、そして生物多様性について学ぶ「こども環境セミナー」が、北海道新聞社で行われました。
1時間目は、円山動物園の朝倉卓也さんを講師に迎え、森にすむいきものについて学びました。スクリーンに映し出されたのは、オランウータン、ゼニガタアザラシ、ホッキョクグマ、アムールトラ、チンパンジーなど、どれも円山動物園にいる動物たち。「この中で森にすんでいる動物は?」。
朝倉さんが出す○×クイズに、進行役のお天気キャスター・菅井貴子さんと一緒にこどもたちが元気よく答えます。実は円山動物園にいる50種類の動物のうち、約40種類が森にすんでいるのだとか。森は生き物たちにとって、掛け替えのないすみかなんですね。
続いては、エゾシカ、エゾフクロウ、エゾヒグマなど、北海道の森にすむ動物たちを当てるクイズ。身近な動物が多いだけに、みんな積極的に手を挙げて答えたり、質問したりしていました。
最後は、食物連鎖や生態系といった人と森と動物の関係についてのお話。全ての命はつながっていて、私たち人間も、その中の一部に過ぎません。このつながりがどこかで壊れると、自然全体のバランスも崩れてしまいます。大切な森や地球環境を守るために、わたしたち一人一人にできることは何でしょう。こどもたちに、思ったことを画用紙に書いてもらいました。「自然を大切にする」 「環境や地球のことを考えたい」「いきもの全てが楽しく幸せに暮らせるようにする」。答えはさまざまでしたが、「まずは知って、触れて、考えることが大事。そうして出た思いや言葉が行動につながります」と朝倉さん。今度動物園に行くときは、そんなことを考えてみるのもいいですね。
森は人間の手で手入れされ、間伐(間引き)されることで日の光が地面に届き、
より豊かな恵みをもたらします。
2時間目の授業は、初めに三井物産の斉藤江美さんと齋藤昌史さんから、森の恵みや働き、そして「三井物産の森」について学びました。
森には、木材を生産し、山崩れなどの自然災害を防ぎ、空気をきれいにするといった多くの役割があります。また、山に蓄えられた雨水は森によってきれいにろ過され、やがて川や海に流れて豊かな生命を育みます。
日本は国土の3分の2が森。世界ではフィンランドについで、第2位の森林率を誇ります。そのような緑豊かな環境にもかかわらず、木材自給率は低いのだとか。人工林 では成長し続ける木を人間が間引き(間伐)して使わなければ、森はかえって荒れてしまいます。齋藤昌史さんも「木を切ることは悪いことじゃない。森を守るためにむしろ必要なことなんです」と言います。
そんな中、全国に多くの森を持ち、林業を有効活用しながら、生物多様性や環境に配慮した保全を行ってきたのが三井物産です。「三井物産の森」の約8割が北海道にあり、うち似湾山林、沙流山林、十弗山林は取得してから今年で100年を迎えます。斉藤江美さんからは、その歴史や森の種類について説明していただきました。
続いて三井物産フォレストの小倉誠二郎さんには、林業のことや、北海道の代表的な木々の見分け方などを、スライドや映像を使って教えてもらいました。特に、間伐した木の枝を払い丸太を正確に切り分ける「ハーベスター」と呼ばれる機械の映像は迫力満点。こどもたちも食い入るように見ていました。次世代を担う彼らにとって、林業に興味を持ち、その必要性に触れるとてもいい機会になったようです。